一足早く『ブレードランナー2049』を拝見しました
The first impression of "Blade Runner 2049" and Tomensouke Blaster

本日夕刻より『ブレードランナ−2049』の完成披露試写会が開催されました。
もちろんご招待いただいていたのですが、別冊映画秘宝『ブレードランナー』究極読本&近未来SF映画の世界に縛られて、どこにも出かけられない状態なんです。
それと、エンバーゴが解けましたのでお話しさせていただきますが、じつはこれまでに3回、『ブレードランナー2049』を観てたんです。
最初は8月29日、まだ映画がセキュリータイトル『Three Bridges』と呼ばれていたころ、東京の某所にて、50インチぐらいのモニターで。
しかしモノクロで画質も故意に落としてあり、音だけハッキリと聴こえればいいというようなバージョンでした。
2度目は9月14日、同じセキュリータイトルを、また別のスタジオで観ました。
今度は鮮明なカラー映像でしたが、モニターはさらに小さくなり、映画を堪能するというような環境では毛頭ありませんでした。
ただし字幕翻訳家の松浦美奈先生とご一緒できて、それはそれは楽しい時間でした。
3度目は9月20日、業界最高の上映環境を誇るといわれている五反田のイマジカの試写室で、字幕入りを。
なぜこんな幸福に浴することができたのかというと、配給会社のソニー・ピクチャーズさんから字幕と吹き替え台本の監修を仰せつかったからでした。
もちろんご依頼いただいた時は天にも昇る気持ちでしたが、そこはクールに落ち着き払ったふりをして、喜んでお引き受けいたしますと低音で応えたのでした。
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ドゥニ・ヴィルヌーヴがリドリー・スコットの名作をどう受け継ぎ、料理するのか、楽しみと不安で続編『ブレードランナ−2049』に臨みました。
以下、ネタバレにならないよう配慮しつつ、映画の中の留ブラについても書きますが、もしかしたらここで立ち止まる方が賢明かもしれません。
どうかこの先は、自己責任でよろしくお願いします。

さて、最初の興味はスコット監督が創造し、いまではSF映画のスタンダードになってしまった感の猥雑で混沌とした近未来都市、つまりその後のSF映画で嫌というほど見せられてきた風景を、ヴィルヌーヴ監督はどう表現するのか、でした。
予告編に度々登場する整然として広大なインテリア・シーンは、前作でデッカードとレイチェルが最初に対面するタイレル・ビルのマナーホールに似て、主要な舞台とはならないはず。
肝心のダウンタウンは? 警察署内は? オフィサーKの住居は?

心配は吹き飛び、想像をはるかに凌ぐ新たな設定に、歓喜の往復ビンタをくらったような衝撃でした。
映画はかつて新感覚だった、いまでは使い古された近未来イメージの呪縛を断ち切り、恬淡とし、さらに舞台を縦横に広げているのです。
2049年のLAは地球温暖化の影響か、海岸部は水没し、酸性雨以上に獰猛な雷雨と狂った気象のせいでしょう、時には雪も降る。
街全体がジャンクヤードのサンディエゴ、放射能汚染で廃墟と化したラスベガスなど、スピナーの行動半径も格段に広がっています。

じつは前作でデッカードのアパートのピアノの上に所狭しと並べられたセピア色のアンティック写真に、ずっと不思議を感じてきました。
20世紀初頭に撮られたと思しき数々のポートレートは、デッカードとどう結びつくのだろうか、そこに意味はあるのだろうかと。
新作では広々としたデッカードの住居が紹介され、机の上に、ただ一葉のポートレートが飾られているだけ。
しかもそれは大切な女性の、未だ色褪せぬ笑顔が美しい写真なのです。

ヴィルヌーヴ監督は前作から30年後の変化を、大胆な断捨離で見事に実現したといえるでしょう。
映画全体がすっきりとした印象は、けっしてブレードランナー・ファンを裏切るものではありません。
むしろ私たちが拘ってきた重箱の隅のアイコンにまで、愛情を注ぐことを忘れてはいないのです。
例えば予告編に一瞬出てきたポリススピナーや別のアンティック・スピナー、新しいデザインのジョニ黒、あのころの小さなサイズではないけれど、リタイアしたガフが今回も意味深長な折り紙を披露します。
中でもいちばん目立つアイコンが、デッカード・ブラスターなのでした。

予告編にもあるように、デッカードがブラスターを手にしてオフィサーKと対峙するとき、Kはある理由で警察手帳もなければ、丸腰でした。
その後、敵襲に遭い、ポリススピナーは破壊され、ブラスターも瓦礫に飲まれてしまうのですが、まったく異なる場所で、そのブラスターをKが受け継ぐのです。
そしてクライマックスまで、ブラスターはKとともにあるのです。

それが留ブラであることは、ハリコレからそれを6丁仕入れ、ウェザリングし、3丁は実銃のチャーターアームズ・ブルドッグに留ブラのパーツをネジ止めしてブランクガンに仕立てた工房の主要スタッフが、仲介者でその工房を訪問したハリコレの胸組代表に、現物を見せながら説明しているのですから間違いありません。
その時の画像の一部は、留ブラ・ピューターnanoに付属のブラスター写真集に収録されています。
ここでの大きな問題は、その工房がオモチャの留ブラを使いましたとは、さすがに言えないくらいの製作費を元請け(プロップ・マスター)から受け取っていたことでしょう。
その工房がクレジットを要求する代わりに相応の製作費で下請け業に徹し、ハリウッドの大作映画に様々なプロップを提供している会社だということを、今回の騒動で初めて知りました。

そんなことより『ブレードランナー2049』です。
もはや人とレプリカントを区別するのは、その桁外れの身体能力しかないと思われます。
人なのに神になろうとする血も涙もない男もいれば、自分の生い立ちに苦悩する、人よりも人らしい煩悩のレプリカントがいます。
前作が雨に煙るエンディングを迎えたように、今度は雪がKに降り注ぎ、それまでじっと我慢していたようにブレードランナーのテーマが流れ出します。
そのシーンに涙が溢れたのは、年のせいなのでしょうか。
試写の翌日、突然思い立ち、墓参りに行ったのは、明らかに『ブレードランナー2049』の影響です。
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by tomenosuke_2006 | 2017-10-04 21:42 | TV・映画・ビデオ
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