エンドスケルトンとオリジナルの意味。
まえから欲しいと思っていた絶版品を見つけ、喜々として値段をたずねると、「プライスついてませんかぁ? なら、それ、非売品なんですぅ」なんてバイトの女店員にいわれたりして、ムッときたこと、ないですか。
店主は、何度もある。
売り物じゃねぇなら、店にならべんじゃねーよ。
博物館でもあるまいし、オモチャ屋やホビーショップを名乗る以上、商人(あきんど)に徹したらどうなんだ。
少なくとも留之助商店はプロの商人を目指す。
だから非売品はない。
ショーケースだろうが、使用中の電話だろうが、店から移動できるモノすべてにプライスが付く(店長候補君だけは当分非売品)。
最初のターミネーター(1984)で作られた現存する唯一のフルボディ・エンドスケルトンも、店に飾る以上は、売り物である。
これをプレゼントしてくれたSFXアーティストで、何度もアカデミー賞をとったスタン・ウィンストンには申しわけないけれど、墓場へ持っていくわけにもいかないし。
だいいちスタンが約束を守らなかったから、店主がオリジナルを所有するハメになったのだ。

もうあれから15年。
1991年に東京と大阪で開催された映画のイベント“ハリウッド映画村”の監修役として、若き日の店主はロサンゼルスと東京を行ったり来たりしていた。
ハリウッド映画の過去・現在・未来を、実際に映画で使われたセット・小道具・衣装・記録写真や映像などで展覧する期間限定のイベント。
オープニングを2カ月後のGWにひかえ、最初の開催地、東京では会場作りが予定どおりに進み、展示物の大半は太平洋を渡る船にあった。
すべては順調だった。
旧知の仲のスタン・ウィンストンには、早い時期から協力をとりつけていた。
展示用にエイリアン2の「クィーンのコンセプトマケット」と「ウォーリアーの全身レリーフ」、プレデター2の「フルボディ」とT2の「エンドスケルトン」を、オリジナル・モールド(鋳型)から作ってもらうため、彼の提示した製作原価(材料費と人件費)を支払い、契約書も交わしていた。
そのスタンがチョンボをしていようとは・・・。

オリジナル・モールドから抜く創作物は通称プルといい、映画で実際に使う以外は、めったやたらに作られない。
プルとはオリジナルと同じ意味だが、実際に映画の撮影で使われたものを、とくにオリジナル・プロップと呼んで区別する場合も。
最近、サイドショーが商品化しているハイエンドなフルスケールモノなどは、プルをさらに型取りした量産用のモールドから作られるいわゆるレプリカ。
しかしレプリカでは偽物や模造品のように聞こえることから、プロップ・レプリカと呼ぶ人もいる。

イベントで展示したあとは、すべての作品を返却する約束のため、スタンの提示した製作原価は格安だった。
が、運送会社の担当者が引き取り予定日の1週間前に、作品の下見のため彼の工房を訪ねると、ひとつも完成していないことがわかり、慌てて店主のもとに電話をしてきた。
帰国の準備をしていた店主は、もっと慌てた。
スピルバーグから恐竜映画のオファーがきて、突然忙しくなったとスタン。
ジュラシック・パークといって、いままでにないスケールとリアリズムの歴史的な恐竜映画になるから期待してくれとも。
知ったことか!
バッカモン!!
そう、心で叫び、彼の工房へ急行した。
東京会場の展示コーナーに穴を開けるわけにはいかないし、店主の信用にも関わる。
もはや解決策はひとつしかない。
彼が広い工房のあちこちに展示しているオリジナル・プロップを何としてでも借り出すのだ。
そう、彼の工房は、打ち合わせや仕事のオファで訪れる映画人たちをアッといわせようと、自作の怪物クリーチャーのオリジナルが、ドラマチックに展示してあることで有名な場所だった。
モールドが破棄されたために、二度と再び作ることのできない宝であり記念品だと自慢していたターミネーター1作目の、現存する唯一のエンドスケルトンも、この際、T2の代わりに船に乗ってもらおう。
懇願したり、泣きついたりで、最後は店主が勝った。
当たり前である。
契約書だってあったのだ。
そうやって日本に来たスタン・ウィンストンの代表作たちだったが、なぜ生まれ故郷に帰ることなく店主のものになってしまったのか、それにはもひとつ長い話を披露しなくてはならない。
ま、そのうちに。
a0077842_2284774.jpg
T1はT2より、いい顔してる。両者のもっとも顕著な相違は、向こうずねのデザインにある。T2のエンスケを商品化している国内外のフィギュア・メーカーのうち、バリアントを出しているメーカーはなかなか賢い。じつはT1の商品化権がクリアできないため、T2のバリアントを名乗ってT1をこっそり作っているのだ。知ってましかた? 写真は下呂市の倉庫で出番を待つオリジナルのT1である。いまのところ価格未定。


by tomenosuke_2006 | 2006-07-13 22:39 | プロップ
<< もう一回、やります。 東5F。 >>