留之助ブラスター・アップツーデート-2。
徳さんへ。
かつて頭ごなしの厳しいスケジュールに追い立てられ不本意な作品を納めざるを得なかった苦渋の体験者として、せめて貴君には十分な時間を遣ってもらいたいと思う。
店主にできるアドバイスといったら、それぐらいしかない。
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まだアナログなSFXの時代、ある映画で我ながら上手いと思う特殊なアニメーション・シーンを撮ることになった。
子供たちの描いた運動会のさまざまなクレヨン画が縦横5枚ずつ計25枚、小学校の玄関ホールの壁に画鋲で掲示されている。
その絵が怪しく動き出し、絵と絵がつながり、しまいには25分割された大きな運動会の全景となって二人三脚競争が繰り広げられるのだ。
“原寸大画用紙アニメ”と名付けた劇中もっともロウテクなSFXシーンは、撮影所に組まれた玄関ホールのセットをそのまま使い、夜を徹して2日で撮り上げる計画だった。
アニメーターの長崎希さんが画用紙に手描きした2000枚以上の絵の束を撮影所に持参した。
が、撮影直前に映画製作会社の経理担当プロデューサーが、今夜中にセットを解体すればスタジオ・レンタル代が2日分節約できると言い出したのだ。
金鉱を発見した山師のような態度は強硬で、もはや他人の意見に耳を傾ける知性など期待できそうになかった。
午前0時までの4時間で撮れなきゃ、予定変更だね。
アニメなんてものは、アニメ・スタジオで撮ればいい。
その絵を、セットで撮影した前後のカットではさめばいいじゃないか。
店主がSFXプロデューサーとして働いた日本映画界では、ときに予想もしない価値観と人の壁に阻まれて、涙を呑む場面を幾度となく体験させられたのだった。
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慌てる必要などない。
徳さんには思う存分時間を遣ってもらいたい。
年内に書き上げる予定の刻印原稿は正月返上で進められ、休み明けにまずマガジン回りの原稿がブラスターの原型とともに大木金版所の代表、大木健司氏に渡された。
カスタムナイフ作家で、あらゆる種類の金属や樹脂の加工に造詣の深い当プロジェクトのアドバイザー島田英承さんが太鼓判を押す機械彫刻の専門家が大木さん、トイガン業界では知らぬ人がいない刻印の達人であり、徳さんの前作クラリックガンのそれも大木さんが請け負っていた。
わずか3日間で仕上げたという曲面を描くマガジン底部(いちばん上の画像)の浮き彫りの美しさに、だれもが魅とれてしまった。
とりわけ徳さんの感動は半端ではなかった。
画像がメールされると同時に電話があり、その声は刻印の研究と書き起こしに費やした何ヵ月もの苦労がいっきに報われた喜びに弾んでいた。
マガジン刻印の完成と引き換えに残りの原稿が渡され、まもなくすべてが見事に仕上がった。
だが、しかし。
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実際の銃刻印は、反転された文字や文様で構成される鋼のスタンプを使い、特殊な機械で圧力をかけながら各パーツに刻まれる。
よってスタンプの文字や文様の凸面は鋭角に処理され、結果、刻印の凹面はV字状となり、とりわけ文字の先端は直角を描くわけだが、機械彫刻ではそこまで再現するのは不可能なのだ。
それを早い時期から指摘し、解決の糸口を模索していたのが島田さんだった。
目を凝らさねば見分けがつかない刻印の先端部のアール(上から3つ目の画像を参照)は、徳さんが一文字ずつ修正することになるだろう。
また凹面の処理には島田さんの秘策が使われる予定である。
いずれにしても徳さんの仕事は山を越え、次はキャスト成型の専門家、大東製作所の吉井城延氏に製品化へ向けての主要な作業が委ねられる。
シリコンモールドから抜く琥珀グリップの収縮率を0.4パーセント以下にとどめる新素材があると語る吉井さんもまた、島田さんの懐刀のひとりなのだった。

製作過程が一望できる最新のフォトアルバムをご覧いただきたい。
また2007年10月28日の1回目と12月24日の2回目のフォトアルバムも合わせて閲覧できるよう更新した。
フォトアルバム1〜3:http://homepage.mac.com/tomenosuke/PhotoAlbum14.html
パスワード:5092202
by tomenosuke_2006 | 2008-01-29 18:17 | 留之助ブラスター
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