許しがたいインテリアという名のおかしな室内装飾本です。
1990年にLAのメルローズ・アヴェニューに開業したレストラン、Mel & Rose(メル・アンド・ローズ)がことのほか気に入り、仕事で滞在していた90年から91年の数ヶ月間、週に一度は通ったものだった。
メニューはハンバーガーやホットドッグの気楽なアメリカン・スタイル中心、オーブンで温めてくれるアップルパイは上出来だった。
20世紀はじめ、カリフォルニアの別々の町で生まれ育ったという男の子メルと女の子ローズの、ふたりの名前が店名のいわれ。
メルとローズはLAでめぐり合い大恋愛のすえゴールイン、子宝にも恵まれて、それはそれは幸福な晩年を過ごしたとか。
その長い人生のさまざまな時代のメモラビリア、ローズが使った古ぼけたベビーベッドをはじめテディベアやおままごとセット、メル愛用の錆びた三輪車やリトルリーグのユニフォーム、ハイスクールの教科書や勉強机やポータブルラジオ、さらには額に収められた数えきれないほどの記念写真が、古い順に入り口から奥へ、店内のいたるところに飾られて、おもな品物にはていねいに手書きのキャプションが添えられていた。
もちろんふたりが赤ん坊のころのセピア色に褪せた写真もあれば、孫たちに囲まれたカラー写真も。
そもそもメルローズ・アヴェニューとはこの幸福なカップルの名前に由来していると、ひときわ大きなキャプションが、いちばん目立つ入り口正面に飾られたふたりの結婚写真にベッタリ糊付けされていた。
レストラン・メル・アンド・ローズは個人史博物館であり、まぎれもない20世紀の名残が詰め込まれた古道具置き場。
食卓や椅子や照明器具など、古くても使えそうなものはそのままレストランの備品として活用もされていた。
ロクロを切ったアーリーアメリカン・スタイルの家具から流線型のアメリカン・デコやミッドセンチュリー・モダンが渾然一体となったインテリアで、一貫性のない趣味の悪さ、ミッシュ・マッシュ(mish-mash=ごった煮)が最大の売りだった。
と、そういう昔を思い出させてくれたのが近日入荷のこの本、LA在のアーティスト、Justin Jorgensen(ジャスティン・ジョーゲンセン)監修による最高におかしな写真集『Obscene Interiors: Hardcore Amateur Decor』(許しがたいインテリア:筋金入りのシロウト室内装飾)なのである。
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これのどこが留之助書店向けなのかと問われると返答に窮してしまうけれど、とにかく笑えるから許してやって。
カリフォルニアの家やアパートのミッシュ・マッシュで勘違いなインテリアをせっせとカメラに収めた実録編。
どの部屋も主(あるじ)がよかれと信じて飾り立てたにちがいない自慢の場所だからこそ、失礼とは存じますが大いに笑える。
ばかりか出たがりの主までがカメラに向かってポーズをとっているのだ、オバカだね。
中にはあらぬ姿のものもあり(たぶん)、だからまとめてグレーに塗りつぶされ、このシルエットがまた変なこと空想させてくれる、いやが上にも笑いが増幅する。
徹すれば、どんな馬鹿馬鹿しい事柄も意味を持つようになる、アートにさえなると話していたのは、メル・アンド・ローズを開業したときのデニス・ボーゼス(アンティックショップOff The Wallのオーナー)だったけれど、写真集『許しがたいインテリア』を見ていると、彼の言葉がいまさらながらに信憑性を帯びてくる。
ここまで変な部屋の集大成ともなると、おしゃれなインテリア雑誌も及ばないアートの後光を放ちはじめるからだ。
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それにしてもメル・アンド・ローズ。
じつは売れそうもない古道具やガラクタを運び込み、自分の祖父母の写真などテキトーに利用して、嘘八百のストーリーで塗り固めたレストラン。
ふたりの名前からとってメルローズ・アヴェニューと呼ぶようになったってか?
これじゃお上りさんは信じちゃうよ、店主も鵜呑みにしかけた。
が、それを知ってますます面白くなり、許しがたいインテリアもいつしか心地よく、メル・アンド・ローズへ通うハメに。
が、レストランは1年足らずで廃業してしまった。
デニスはウソをつき続けるのに疲れたと言ってたけれど、頭の固い観光関係者や旅行者からたびたびクレームをつけられたのもやる気をなくした理由のひとつだった。
真面目に頭の固い人たちは世の中から面白いを追いやるね、真面目にテキトーなのがいちばんいい。
留之助書店の本は、言わずと知れた後者向け。
by tomenosuke_2006 | 2008-03-29 18:02 | 書店入荷新着情報
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