Coarsetoys限定版もまとめて全3種、予約開始
PRE-ORDER: all 3 editions of Do Not Disturb
Coarsetoys限定版もまとめて全3種、予約開始_a0077842_7201321.jpg
一人きりの饗宴

僕は何をやっているんだ? 彼の頭の中をこの言葉が駆け巡った。最初は囁き声で。次は叫び声で。

僕は何をしたんだ? 彼の目の前には魚が横たわっている。その骨は手術用のメスのようで、手遅れになってから現れた武器のようだった。

彼はその物体から一歩退くと、誰かいないかとあたりを見回した。これが何かを説明してくれる人、責任をなすりつけられるもの、この物体を求めた人物がいないかと。しかし雲間にハゲワシもいなかったし、砂の中にヘビもいなかった。あるのは彼の意思だけだった。彼の衝動、そして彼には取り返すことのできない行動の結果だった。

彼は麻痺したように立ちつくし、その魚が元の姿になるのを待っていた。これは夢だ。心が仕掛けるいたずらだ。幻覚の砂漠が見せる蜃気楼なんだ。

しかし彼の歯の間には骨が挟まり、歯茎には鱗がまとわりついていた。平凡な魚の味がかすかに彼の舌に残っていた。

これは僕ではない。彼は言い張った。他の動物がルールを破って本性を剥き出しにしたんだ。僕じゃない。この状態を脱するには、完全に隠れることができるところまで引き返すことだ。彼の母親が言っていた、見えないところ、忘れられるところまで。一歩踏み出したら、次の一歩を踏み出す。それだけが今彼のやるべきことだ。

ではどうして彼はこの物体に向かって一歩踏み出したのか? なぜ彼は生肉に顔をうずめているのか?

これは僕じゃない。彼は自分にそう言い聞かせた。しかし彼はその魚をめちゃくちゃに破壊していた。皮膚を裂き、尻尾を、そして尾ひれを食べ、頭へと向かっていった。その間、魚は痙攣しもがき続けていた。

やったのは僕じゃない! 彼は獰猛に魚を噛み砕きながら、一口ごとにそう言い聞かせた。その呪文が彼の頭を回り続けた。そのうちにその言葉はコントロールを失い、順番が入れ替わり疑問へと変わった。

やったのは僕じゃないのか? 彼は問いかけた。これが最初からやりたかったことではないのか? 僕はこうなるように運命付けられていたのではないか?

彼がその答えにたどり着く前に、魚が音を立てた。音はエラではなく口から発せられていた。最期に水を求める喘ぎか何かのようで、自分の意思で出した音ではなかった。

「僕…」
言葉だ。この魚は何か言おうとしていた。

「僕の…」

彼は耳を魚の口元に寄せ、魚が言い終わるのを待った。しかしなぜ待つ? 彼は魚が何を言おうとしているのかわかっていた。僕の近くに来るな、だ。

彼は耳をもっと近くに寄せた。

僕のことを消さないでくれ。

彼は固唾を飲んだ。

僕のことを食べないでくれ。

しかし魚は何も言わなかった。

魚は身をよじった。骨は地面に落ち、砂が舞い上がった。そして魚はぐったりして動かなくなった。
Coarsetoys限定版もまとめて全3種、予約開始_a0077842_7232358.jpg
Coarsetoys限定版もまとめて全3種、予約開始_a0077842_7233479.jpg
暑い日だった。風は強く吹こうとしては失敗していた。太陽と地平線は敵同士のように拮抗していた。

彼は魚の残骸から一歩離れ、熱い砂の上に崩れ落ちた。彼はもはや空腹でではなく、彼はそれが嬉しかった。「やってやった」。彼は大声で叫ぶと、微笑みを浮かべ目を閉じた。嘆いたり、逃げ出したりするべきときではない。これは勝利の瞬間だった。彼はそれを味わおうとした。

しかしその後、このときのことを振り返っても、彼は満足感しか思い起こせないはずだ。何時間が経ったのか、何日が過ぎたのかは思い出せないだろう。時間はあっという間に過ぎ去った。彼はこのときの感覚を誰かと分かち合えればどんなに素敵だろうと考えた。日は沈みかけ、空はピンク色に染まっていた。彼は夢を見ているように座っていた。「これを見てみろよ!」彼は大きな声で叫んだ。答えるものが誰もいないことを知った彼は、他に空をうっとりと眺める動物がいないか探した。しかし彼の影すらも彼の足元に消えてしまっていた。

いや、彼はそれすらも覚えていないだろう。

sauce from Coarse http://www.coarselife.com/content/coarselog/index.php
Coarsetoys限定版もまとめて全3種、予約開始_a0077842_7243110.jpg
Coarsetoys限定版もまとめて全3種、予約開始_a0077842_7244039.jpg
2016-03-28のブログで紹介したのは、じつはCoarsetoysのオンラインストア限定版、Promised Bliss(約束された至福)とEndless Shadows(無限の影)で、小売店向けには別のカラーウェイが用意されていた。
それがご覧のもっともカラフルなDelusion(妄想)版なんである。
ちなみにこの3つのネーミングはパーマネント・ゲストとまったく同じ、あのバスタブにつかっていた魚が今作では背中を大きくえぐられて、シークェルの様相を呈しているのだ。
で、留之助にはメーカーの好意で妄想版はもとより、2つのオンライン限定版も入荷が決まり、これより予約を受け付ける。
お届けは今夏。

ご予約はこちらから→http://goo.gl/MEvtCm
by tomenosuke_2006 | 2016-04-21 07:35 | Coarse 新製品情報
<< オールスター・キャストの塗り絵... 留之助10周年記念フィギュア(... >>