I love Flesh Gordon
はじめにロー・ファンタジー映画『テッド』(2012年)のこと で、あのえも言われぬ握り心地をより多くのみなさんに体験いただきたく、レジン版で得た利益になけなしの貯えを加えて、去年8月、リーズナブルなソフビ版を水鉄砲風に4色の透明素材で発表すると、とくにオリジナル・プロップに近いピンクが一気に売り切れたのでした。 おかげさまで原価が回収できたのを機に、今度は彩色マスクの製作に資金を投入。 こうしてついにSFスプーフ映画『フレッシュ・ゴードン』(1974年/上のポスター)に出てきた光線銃の完全かつ検証可能で不可逆的なソフビ製オリジナル・カラー版の実現に漕ぎ着けたのであります。 と、そんな流れはともかく、声を大にして言いたいことがあるのです。 それは、フレッシュ・ゴードン・ピストルについて語りはじめると、ふたりにひとりは、「ああ、あれね、『テッド』に出てきたSF映画でしょ」って、話を合わせようとしてくれるのですが、ぜんぜんそうじゃないんですってば! 『テッド』のあれは、『スター・ウォーズ』(1977年)の大ヒットで突如ハリウッドを席巻したSFブームに便乗しつつも、便乗し損なったがゆえにいまではユニークすぎる無駄な大予算映画として忘れ難い『フラッシュ・ゴードン』(1980年/下のポスター)のことであって、『フレッシュ・ゴードン』とは一切関係ないのです。 では『テッド』の『フラッシュ・ゴードン』(1980年)とは 1980年の夏のことですが、リメイク版『フラッシュ・ゴードン』のポスト・プロダクションで忙しくしていたSFXスーパーバイザーのフランク・ヴァン・ダー・ヴィーアを、彼のスタジオに訪ねたことがあります。 オリジナル『フラッシュ・ゴードン』の再映画化権を持つ大物プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスの「スター・ウォーズを凌ぐ映画を作れ」というトンデモな使命を受け、同じラウレンティスの『キングコング』(1976年)でも活躍したベテランのヴィーアが、SFX部門の長として采配を振るっていました。 が、どうでしょう、『スター・ウォーズ』(1977年)のジョン・ダイクストラや『未知との遭遇』(1978年)のダグラス・トランブルたちハリウッドSFX界気鋭の特殊映像作家とは、眼光も声の張りさえ異なり、とても穏やかなお爺ちゃんで、こんな人にイマドキのリアルな合成映像が作れるんだろうかと心配になったのでした。 実際、『フラッシュ・ゴードン』は全編がロウテクなSFXで切り盛りされて、むしろ半世紀前に作られたスペースオペラの単なる総天然色版といった趣。 『スター・ウォーズ』の洗礼を受けて目が肥えた観客を満足させるには、いささか力不足というしかありませんでした。 そうそう、『テッド』の主人公ジョン・ベネットだけは例外です。 ならオリジナル『フラッシュ・ゴードン』(1936年 - 1940年)とは アレックス・レイモンドの新聞漫画を原作に、オリンピックの水泳選手だったバスター・クラブを主演に迎え、1936年に30分13話構成の『超人対火星人』が、1938年に15話構成の『火星地球を攻撃す』が、1940年に12話構成の『宇宙征服』が作られました。 その人気たるや長年衰えることはなく、50年代まで土曜日の昼間興行"マチネー"で繰り返し上映され、TVが普及すると今度はブラウン管に活躍の場を移し、さらに90分の短縮編集版が劇場でリバイバル公開されたり、海外へ輸出されました。 少年時代、そんな『フラッシュ・ゴードン』に夢中になり、大人になってリメイクを考えるもラウレンティスが権利を独占していると知ったジョージ・ルーカスが、代わりに『スター・ウォーズ』(1977年/下のポスター)を作ったことは、もはや伝説です。 が、ルーカスと同じく少年時代に『フラッシュ・ゴードン』に熱を上げ、3本のハードコア・ポルノで資金を作った3人の三流映画人マイケル・ベンベニステとハワード・ジームとビル・オスコが著作権など意に介さず、『フラッシュ・ゴードン』をソフトコア・ポルノに仕立て直し、『フレッシュ・ゴードン』のタイトルで『スター・ウォーズ』より3年も早く発表していたことに、あっぱれを感じるのでした。 そこで『スター・ウォーズ』(1977年)なんですが だれもが一度は見たことがあるといっても過言ではないでしょう、これは、けっして劇場公開版ポスターではございません。 映画ポスターだけでなく、ストーリーボード・アーティストとして60年以上もハリウッドで腕をふるってきた中国系アメリカ人、トム・ジョンによる劇場公開版ポスターを下敷きに、イラストレーターのヒルブラント兄弟がスーベニア・ポスターとして描き下ろしたもので、店主も1978年にハリウッドのお土産店で購入し、いまも仕事場の一番目立つ場所に飾っています。 トム・ジョン作品には、ふたつの大きな間違いがありました。 ひとつはルーク・スカイウォーカーがダース・ベイダーのブーツを履いている点。 もうひとつはレイア・オーガナ姫がモーゼル・ベースのハン・ソロ・ブラスターを握っていることでした。 このミスをヒルブラント兄弟が正したのが上の作品で、世界でもっとも売れたスーベニア・ポスターといわれています。 で、この有名なヒルブラント・ポスターのエッセンスをちゃっかりいただき、『フレッシュ・ゴードン』の日本版ポスターが作られたのでした。 だから『フレッシュ・ゴードン』(1974年) 『スター・ウォーズ』が本国アメリカより1年遅れで日本公開される直前、日本中が『スター・ウォーズ』& SF熱でうなされていた特別な時代に、ピンク映画の製作配給会社の流れをくむ新興の洋画配給会社ジョイパックフィルムが、手作りSFX満載の『フレッシュ・ゴードン』を日本に紹介してくれたのです。 オリジナル・タイトルより大きく、急ごしらえのサブ・タイトル『SPACE WARS』の文字が白ヌキでレイアウトされ、色合いや構図はまさしくヒルブラント風。 まったくもって世間の批判をものともしないジョイパックのやってやれ感に、強く好感を抱いたものでした。 その後も何を思ったか子ども向けSF映画の『むく犬ディグビー』を配給したり、とりわけ強烈だったのはジョン・カーペンターの『ハロウィン』を、いまでいうところの爆音上映的に効果音を増幅させ、一層ショッキングに改造して公開したことでしょう。 そんなジョイパックフィルムですが、いまは跡形もありません。 新宿歌舞伎町にあった本社事務所にポスターをもらいに寄った時の、女性事務員さんのやさしい対応が昨日のことのように思い出されます。 で、本題のフレッシュ・ゴードン・ピストル このイラストのタッチ、大好きなんですが、ひとつだけ誤解を招きかねない表現があります。 フレッシュ・ゴードン・ピストル、通称ポコチン・ピストルをヒーローが握りしめていますが、劇中ではそんなシーンは一度たりとも出てきません。 ポコチン・ピストルは悪役ワン皇帝軍の兵隊専用の装備品だからです。 兵隊以外では、ゴードンの仲間のフレクシー博士が、敵から取り上げたポコチン・ピストルを無理やり敵の口に突っ込もうとするけしからんシーン(下の画像)がありますが、それくらいです。 しかしフレンチ・ポスターのアーティストは、よほどポコチン・ピストルが気に入ったのか、強くインスパイアされたのか、フレッシュ・ゴードンに持たせてしまったというわけです。 見上げた感性の持ち主というしかありません。 ポコチン・ピストルこそは『フレッシュ・ゴードン』のアイコンであるとひたすら信じて止まない留之助にとって、これ以上ないポスターなのでした。 もう、これくらいにしておきましょう また、先日、フレッシュ・ゴードン・ピストル・OG版の発売を5月25日とお伝えしましたが、諸般の事情で6月1日(金)午前11時に変更させていただきます。 楽しみにお待ちいただいていたみなさん、申し訳ございませんでした。 発売当日は、下記のサイトまでお越しくださいませ。 AMAZON→https://goo.gl/PGSwnz STORES→https://tomenosuke.stores.jp/ INTERNATIONAL ORDER→http://tomenosuke.bandec-japan.com/ ▲
by tomenosuke_2006
| 2018-05-25 17:17
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