A story of the Fright Night Vampire Skull
私ごとですが、映画ジャーナリストを生業に1980年代のLAに住んでいたころ、ハリウッド製SFX映画と親密になりすぎて、作品そのものを冷静に評価できないでいたような気がします。 創作意欲と情熱が充満するスタジオで、日頃から仲良くしているモデルメーカーの友人がミニチュア未来都市製作の陣頭指揮をとったかと思えば、別の友人が怪物作りの責任者として数十人のクルーを束ねる。 暇さえあれば現場を訪ね、そんな様子を間近で見ていたら、彼らの努力や苦労が他人事ではなくなり、キャスト&クルーの完成試写会に呼ばれようものならスタッフの一員になったような錯覚に陥り、なんでもオッケーな傑作に思えてしまう。 これではジャーナリストとして、あるいは批評家としての資質ゼロ、落第間違いなしなんですが、不思議にやっていけたのは、SNSもインターネットさえない時代、SF&ホラー映画ファンが旬な情報を得るためには、当時のスターログやホットドッグプレスに寄稿した(店主の)レポートを読むぐらいしか手立てがなかったからでしょう。 おかげで需要が供給を上回る忙しさを経験させてもらいました。 稀ではありますが、辛辣な評を書いたこともあります。 深入りすぎて、見なくてもいいもの、知らないでこしたことがないものに運悪く遭遇し、変な正義感が先走って冷静さを欠き、頭っから映画を否定してしまう。 大の仲良しだったロブ・ボーティンがモンスター製作を監修した『遊星からの物体X』(1982年)の当時の評価は、ある理由でネガティブなものになってしまったのでした。 すみません、本題に戻ります。 ようするに当時、SFXの現場にドップリ浸かったがために盲目的となり、いまも変わらず愛しすぎるホラー・コメディ『フライトナイト』(1985年)の、店主にとっては思い出のアイコンとでもうべきバンパイア・スカルにまつわる話をしようと思うのです。 ▲ ライブラリアン・ゴーストの骨格を彫刻するマーク・ウィルソン 『フライトナイト』はリチャード・エドランドが運営するSFXスタジオ、BFCの第2作目として、『ゴーストバスターズ』(1984年)完成直後、休むまもなく製作がはじまったトム・ホランドの初監督作品でした。 ちなみにエドランドとは、ILM時代に『スター・ウォーズ ep.4〜ep.6』(1977年〜1983年) でアカデミーSFX賞を受賞後、ハリウッドに自前のスタジオを開設した当時のスターSFXマンのことであり、ホランドは秀作『サイコ2』(1983年)の脚本家です。 当時、この二人がホラー映画を撮ると聞いただけで、無条件降伏したものです。 SFXに投入される製作費が『ゴーストバスターズ』の4分の1以下、製作期間も半分という厳しい条件や、BFCのモンスター・ショップが縮小されると聞いても、そんなに心配ではありませんでした。 『ゴーストバスターズ』のトップクルー、スティーブ・ジョンソンとランディ・クックがチームを再編成するのですから間違いなしです。 スライマーの彫刻をアシストし、そのぬいぐるみに入って緑のオバケを演じたり、ライブラリアン・ゴーストの骨格を彫刻したマーク・ウィルソンたち選りすぐりのクルーがチームに残こりました。 ▲ ライブラリアン・ゴーストの劇中カット スティーブが膨大なスペシャル・メークアップ・エフェクトすべてを監修しました。 主人公チャーリーの友人で事件に巻き込まれてしまう悲しい犠牲者エドのメイク、狼と化したエドが死とともに人間に戻る逆変身効果、バンパイアの同居人ビリーの溶解効果、血を吸われて変貌したヒロイン、エイミーの醜くおどろおどろしいメイクなど。 余談ですが、かつて店主がSFXを担当した東宝映画『学校の怪談』(1995年)の口裂け女(のマスク)は、スペシャル・メークアップ・アーティストの故・高柳祐介くんに、『フライトナイト』のヒロインの醜い歯並びをそっくり真似するよう頼んで作ってもらったのでした。 『ゴーストバスターズ』でテラードッグのミニチュアを彫刻し動かしたモデル・アニメーターのランディは、バンパイアが変身した大コウモリのパペットの製作と操演がおもな仕事でしたが、時にはバンパイア役のクリス・サランドンのメークアップに駆り出されたりしました。 ▲ スティーブ(左)とエド役のスティーブン・ジョフリーズ ▲ バンパイア役のジェリー・ダンドリッジとランディ(右) そんな低予算で人手不足にもかかわらず、仕事が山積みのモンスター・ショップの熱気に魅せられ、通いつめました。 ある日、映画のクライマックスでバンパイアが巨大コウモリに変身して燃え尽きるとき、炎の中に浮かび上がる全身骨格の作り方をスティーブが提案するのを見て、心底、天才を感じたものです。 それは最高に効果的で安上がりな方法でした。 「ライブラリアン・ゴーストのモールドがどこかにあっただろ。あれを利用すればいい。スカルは強面の男に変えて鋭い牙に付け替え、腕はコウモリの翼の骨格に似せたらなんとかなるはずだ」 そうなんです、あまり公にはされていませんが、『フライトナイト』のバンパイアの断末魔の姿は『ゴーストバスターズ』のライブラリアン・ゴーストの生まれ変わり、いや、息子のようなものだったのです。 さらにこのことを知る人はほとんどいないと思いますが、マーク・ウィルソンが作ったライブラリアンのスカルを、スティーブの指導のもと、バンパイア・スカルにカスタマイズしたのは『フライトナイト』にボランティアとして参加し、努力が認められて他のクルーとともにエンディング・クレジットに名を残した木田眞紀夫くんという日本人青年でした。 スペシャル・メークアップ・アーティストを志し、LAに住む店主を訪ねて来た熱血男児で、勉強がてらスティーブの元で働けるよう橋渡しをさせてもらったのでした。 と、まぁ、本日、キャスト工場から届いた分納第1回目のバンパイア・スカルを検品しながら、青春の80年代に思いを馳せらせてしまった、いまではいい年の店主なのでした。 検品後、バンパイア・スカルは東京都町田市の造形工房に送られ、そこで軽く汚し塗装が施されて完成の運びとなります。 9月下旬には発売したいと思っています。 ▲ 断末魔のバンパイア I talked mixing in some of the episodes from the time, such as how the skeleton of the Librarian Ghost made for “Ghostbusters” was actually used for the Vampire Skeleton of the following year movie “Fright Night.”
by tomenosuke_2006
| 2018-08-21 08:07
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