1960年代アメリカのオッキモチャのこと・その1
以前、ムカシモチャのカテゴリでスパイモチャについて3回ほど続けて書いたことがあったけれど、その結び“スパイモチャ/その3/ナポソロもの”で「スパイモチャからオッキモチャへ、店主の玩具道は果てしなく続く」みたいなこと言って、そのまんまにしていたことを思い出した。
で、続きを。
1960年代アメリカのオッキモチャのこと・その1_a0077842_14154177.jpg
留之助商店には“ならでは”の品物がいろいろあるけれど、たとえば1960年代アメリアの4大オッキモチャをつねに在庫している店など、うち以外、日本のどこを探してもないはずだ・・・なんて大見得切っても、そもそも4大オッキモチャなんていう概念は、いまのところ岐阜県高山市本町3丁目44番地でしか通用しないと思われる。
1960年代当時、つまり店主が少年時代の海の向こうのオッキモチャは、単に大きいとうだけでなく、あらぬ造形で、存在感が並ではないところがよかった。
ベアブリックの1000%(高さ約70センチ)や20インチ・ダニー(高さ約50センチ)も、彼らの個性のまえではひれ伏すしかないのだ。
当店にはわずかにブリキ製のビンテージトイもあるけれど、ブリキノモチャは店主的にはすでに終わったと見なしている。
プレスよりはキャスティングにつきる。
高度で柔軟な表現力を有した化(バケ)学素材のプラスチックやソフビでできたキャスティング(鋳造)製品の方が店主の好みだし、そういう点からも60年代オッキモチャこそは、当時の新素材“プラスチック”によるかつてない色彩と形状と質感を得て、オモチャの新時代を体現したのだ。
デザイナーズトイの原点、オブジェモチャのご先祖さまなのである、絶対的に。
その大きさからいっても、彼らは単なるオモチャにとどまらず、ペットか家族の一員として迎えられるよう企画された。
たとえばマテルやヒューブレーのトイガン握って西部劇ごっこするのではなく、いっしょに暮らすオモチャ。
男の子が抱きかかえても、連れ歩いてもおかしくない、だけでなく、ひときわ目立って注目を集めるに十分なサイズ。
そういうオッキモチャが1960年代はじめに4種類、誕生したのだ。
それがロボット・コマンド、グレート・ガルー、キング・ザー、ビッグ・ルーだった。
(ロボット・コマンドは当店ホームページのトップに、グレート・ガルーは当ブログ右下のネームカードに、キング・ザーは同じく当ブログ右上のロゴに引用してます。それくらい好きってこと?)
1960年代アメリカのオッキモチャのこと・その1_a0077842_14161864.jpg

TV-CMから。左よりロボット・コマンド、キング・ザー、ビッグ・ルー。

最大手のマテルが女の子用にバービーを、男の子用にシューティングシェルのトイガン(ムカシモチャのカテゴリで紹介)を大ヒットさせていた1960年代はじめ、アイディアルとマルクスという二番手を競うライバル・オモチャメーカー2社が、男の子向けに投入してきたのがオッキモチャだった。
アイディアルからは高さ46センチのロボット・コマンドが、マルクスからは57センチのグレート・ガルーが、まず1961年のクリスマス・シーズンにデビューした。
1961年といえば、ジョン・F・ケネディが第35代アメリカ合衆国大統領に就任し、近年で最も偉大な大統領就任演説を披瀝した年でもある。
「祖国があなたに何をしてくれるのか尋ねるのではなく、あなたが祖国に何ができるか自問してほしい」
オットット、きどうしゅうせい、軌道修正。

ロボット・コマンドは、君の命令どおり動く。
さぁ、マイクロフォン・リモコンに語りかけよ。
前進、右旋回、左旋回!
ミサイルボール発射、ロケット発射!
目玉がつねに渦巻き回転しているのは、敵を見逃さないため。
後退のメカニズムは搭載されていない。
なぜならロボット・コマンドは決して敵に後ろ姿を見せないのだ。
(TV-CMのナレーションから抜粋)

マイクロフォン・リモコンに向かって語りかけるというのは、厳密にはマイク(のカタチをしているだけ)に向かって息を吹きかけ、マイク内部の薄い金属板を動かして、電気回路の開閉を操作することにほかならない。
マイクロフォン・リモコンとロボットは、ロボット内蔵の駆動用モーター直結の電線と、さらに1本、カメラのレリーズのようなワイヤーでつながれ、そのワイヤーのプッシュ&プル操作でロボットに組み込まれたメカニズムのギヤを切り替え、すべてのアクションを制御する。
実態はスーパーロウテク、けど思い通りに動かすには慣れとコツを要した。
値段の14ドル97セントは、当時の家庭用21型テレビが150〜200ドルしたことを思えば、けっして安いとはいえないが、爆発的に売れた。
平和なアメリカのいたるところで、ロボット・コマンドの操作を競い合う少年たちがいた。
中には、将来、ベトナムの戦地へ駆り出されるとも知らず、マイクロフォン・リモコンに向かって「ミサイル発射!」と声を張り上げていたあどけない少年も。
そういう時代だったのだ。
つづく。
1960年代アメリカのオッキモチャのこと・その1_a0077842_019692.jpg

A Boy and his Robot Command/1962年の写真


by tomenosuke_2006 | 2006-10-09 00:29 | ムカシモチャ
<< 1960年代アメリカのオッキモ... キッドロボットの新作、ウェスタ... >>