1960年代アメリカのオッキモチャのこと・その3
●ロボット・コマンド(Robot Command)1961年〜1969年
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ロボット・コマンドの当時ものカラーTV-CMをみて驚いた。
薄紫のボディにスケルトンの頭をしてるじゃないか。
長年、ロボコマ追いかけてきたけれど、こんなの見たことない。
とにかくムショーに欲しい。
絶対、手に入れてやる。
そう思ったのは去年10月のこと。
さっそくアメリカのコレクターに当たってみた。
アメリカにはロボコマ・ファンで構成されるソサエティのようなものが存在する。
壊れたロボコマから使えるパーツを採り出し、リスト販売している人とか、解説書や保証書をオリジナルの紙質にまでこだわり復刻してる人。
中にはロボコマのもっともデリケートで壊れやすい部分、目の玉の回転を制御する細いゴムヒモを専門に売る人もいる。
値段は10ドル。
オリジナルより耐久性にすぐれ、長過ぎず、短過ぎず、絶妙なサイズに調整したものを届けてくれる。
とにかくロボコマがらみで知り合ったアメリカ人全員に、薄紫バージョンを余分に持ってたら譲ってほしいと、手当たり次第にメールした。
と、半日もたたないうちに2人からレスが。
あのTV-CMは1970年に放送されたもので、薄紫のロボコマは試作品だと。
新製品として売り出される予定が結局は商品化されず、ロボコマそのものも1969年のクリスマスをもってアイディアルのカタログから姿を消した。
つまり生産が打ち切られたというのだ。
ホッ、なければないで、むしろうれしい・・・レアだという理由でとんでもない金額を要求されたらどうしようかと、じつは気が気でなかった店主の気持ち、分かる人には分かりますよねぇ。
ロボコマはやっぱりベネトン風、赤と青と黄色の原色コンビネーションにかぎるのだ。
9年間、作り続けられたロボコマは、初年度の1961年版だけ、右胸の"ROBOT COMMAND"のロゴラベルが黒ベタ白ヌキ文字で作られ、あとは赤ベタ白ヌキ文字に変更された。1960年代アメリカのオッキモチャのこと・その3_a0077842_9144154.jpg
という理由で初年度版がインナー(緩衝材)付きオリジナルパッケージに入り、ロケットミサイル2本、ミサイルボール8個、解説書と保証書が付属し、さらに販売店向け修理マニュアル(左の写真)でもオマケに付いたなら、もはや恐ろしい値段になってしまう。
ちなみに修理マニュアルはロボコマ生誕40周年を記念して、2001年にソサエティのメンバーが復刻版を100部だけ限定出版したが、いまではそれだけで150ドルの値がついている。
以上はいまのアメリカでのロボコマ事情だが、かつて1960年代中ごろ、日本へもロボコマの波が押し寄せていたのだった。
第一次アニメブームに乗ってアトムや鉄人28号や8マンや、ときにはロボットキャラではない“のらくろ”や伊賀の影丸まで、もはや手当たり次第にロボットプラモ化していたイマイが、アメリカで大ヒット中のロボコマの権利を手に入れ、日本向けに改名して、その縮小版(日本の住宅事情を考慮した?)を2種類発売したのである。
まず大きい方がビッグサンダー。
本家のおよそ2/3のサイズで、本家と同じアクションを、マイクロフォンのギミックなしのふつうのリモコンで操作する。
小学5年生だったか、6年だったか、店主もビッグサンダーの組立てに挑戦したが、難しすぎて完成できなかった。
もちろんロボコマの存在をまったく知らない当時の店主だったが、他のイマイのロボットプラモにはない毛色のちがい・・・今風にいえばアメリカン・ポップな香りを感じとっていた、ような気がする。
ビッグサンダーは動かなくても特別で、子供部屋のいちばん目立つ場所に飾ったのだった。
もうひとつ、ビッグサンダーのさらに縮小廉価版としてベビーサンダーが作られた。
モーターで走り、ミサイルの発射は手動、両腕の付け根の黄色いパーツは省略されて赤と青のツートンカラーとなり、見るからに貧弱な子だった。

●キング・ザー(King Zor)1962年〜1964年
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ロボコマと同じアイディアルから発売されたキング・ザーは、口語体で発音すれば、キンザーである。
キンザーはキャスティングされた緑色のプラスチックのからだに、黄緑色のセルロイド製手足を持つロボット恐竜。
アメリカ征服を企てるマッドサイエンティストが発明した、らしい。
攻撃用の銃と吸盤付きのダーツが8本付属して、当時の値段はロボコマの14ドル97セントよりわずかに安い12ドル63セントだった。
が、現在では生産数がはるかに少なかったことと、セルロイドの手足が壊れやすく、簡単には完品を見つけられないという理由で、程度のいいキンザーにはロボコマ以上のプレミアがつく。
当店の販売価格もハンパじゃなく、ここで口にするのもチョットネーである(興味のある方は直接お店までご連絡を)。
箱付き完品と、箱なし完品と、付属品なしのキンザーのみとでは、現在のアメリカでの取り引き価格にそれぞれ500ドル以上の差がつく。
つまりパッケージだけで500ドルするということ。
笑ってやってください、店主はその劣化した段ボール箱のみに600ドル、送料50ドル、日本円でしめて78000円も払いましたとさ。



●グレート・ガルー(Great Garloo)1961年〜1963年
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ロボコマは本体の底に単1乾電池3本、キンザーは同じく本体の底に単1乾電池が2本入る仕組みだが、このマルクスのグレート・ガルー(以後、グレガ)はリモコン内に単1乾電池を2本収納する仕様。
左腕に金色のブレスレットを、首からはグレガのロゴが刻印されたメダルペンダントを下げているオシャレさんである。
トレーと呼ばれる厚紙のコースターが1枚付属するが、用途がはっきりしない。
両腕の付け根のヒンジの露出をおおうストラップ状のスポンジ2本、手のひらに貼り付けるコインサイズのスポンジ(物をつかむ際に役立つ)2個も付属する。
グレガにもまたファンのソサエティがあり、パーツの入手はそれほど難しくはない。
ありがたいのは経年劣化から逃れることのできないスポンジ・パーツを、完全復刻している人がいること。
アメリカの玩具愛好家とその世界の懐の深さ、多様さには、ホント驚かされるものがある。
生産数はライバルのロボコマには及ばないが、その希少性からいったら安い方だろうか、グレガの現在の取引相場はロボコマと同じくらいである。

●ビッグ・ルー(Big Loo)1963年
やっつけとしか思えない作り。
だれが喜び、欲するであろう、そのえも言われぬ表情やら体裁。
ビッグ・ルー(以後“・”省略)はことのほか人気が低く、1963年のクリスマス・シーズンに登場するも、大幅に売れ残り、子供の背丈ほどある大きな専用箱はオモチャ屋やデパートで厄介者のごとく扱われた。
生まれた時がまた悪く、つまりは生まれながらの流行遅れで世捨て人。
6000個が生産されたが、実際に売れたのは3000個以下だと伝えられ、ゆえにいまではスーパーレア。
もし完品があれば1万ドル払ってもいいという見上げたマニアが、アメリカにはいるらしい。
もちろん当店でも1個だけだけれど、在庫している。
ただいま店主、付属品の収集を楽しんでます。
以下は探索中のパーツリストです、日本ではだれも持ってないと思うけど。
・黒い吸盤(リプロ)付きダート4本。
・赤のミサイルボール4個。
・黒のロケット1個。
とりあえずパッケージ探すのはあきらめて、その他がぜんぶそろったところで値付けの予定。
さぁ、いくらになるんだろう
いくら、いままでこいつに浪費してきたんだろう。

さーてさて、今回のブログで使用したキンザとグレガとビッグルーのグラフィックですが、これは2004年にアメリカで各300枚ずつシルク印刷された現代物のコラージュ作品です。
サイズはおよそ32cm×42cm。
きれいでしょ?
当店で額装したもの売ってますので、オッキモチャ本体と合わせていかがでしょうか?
by tomenosuke_2006 | 2006-10-12 09:46 | ムカシモチャ
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