当店に非売品はひとつもございませんが・・・。
お店にあるものはぜんぶ売り物、非売品は置かない。
っていうのが留之助商店のモットーなんだけど、あわてて売らなくていいもの、あまり売りたくないものなんかには、忘れたフリしてプライスタグをつけてない。
冷やかしでもそうでない人でも、値段をきかれた場合には、とりあえず大袈裟な、けん制球的値段をいうことにしている。
おかげさまでT1のエンスケやエイリアン2のウォーリアなど、本物プロップの値段を聞いて、じゃぁこれちょうだいっていった人はいまのところいない。
これいくら?って聞く人は、たぶんそれが何なのか知ってるわけだよね。
そういう意味では一度も値段を尋ねられたことがない、つまりほとんどの人に興味を抱いてもらえない、でも店主イチ押しのプロップが、下の写真のカブリものなのであるよ。
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通称ツーホーンズ(TWO HORNS)、コーネル(CORNEL)ともカーネル(KERNEL)とも呼ばれる。
発泡ウレタンのかたまりをナイフやハサミで巧みに削り出し、その上にラテックスゴムをハケ塗りして形状を整え、眼球レンズを接着し、ブラシで色を吹いて仕上げた、専門用語でいうところのビルドアップ・マスクだ。
粘土彫刻を石膏モールドにとってラテックスゴムで抜く式の量産型マスクとは異なり、これは正真正銘の1点もの。
天にも地にも、これ1ッコきゃない。
凝視するまでもないだろ、作者の情感さえ伝わってくる生々しい仕上がり。
店主にとって、これこそ芸術のナニモノでもないのだ。
作者はリック・ベイカー
スペシャル・メーキャップ界の大御所、アカデミー受賞歴6回、いまでは神のような存在のリックが、まだ無名時代の1977年、B級SF映画溶解人間でボランティア的活躍をした直後にモンスター好きの友人(フィル・ティペット、ジョン・バーグ、ダグ・ベズウィック、ロブ・ボーティン)たちといっしょに雇われ、タイトなスケジュールと予算の中で創り出したエイリアンのひとつだった。
その映画とはスター・ウォーズ。
モスアイズリーの街の奇っ怪なエイリアンひしめく酒場カンティーナに、このツーホーンズはたむろしていた。
エリアン(2年後)でノストロモ号をデザインするロン・コッブのスケッチをもとに、リックによると、たった一晩で創り上げたものらしい。
いうまでもないけれど、SWの空前絶後の大ヒットでカンティーナ・シークェンスも大いに話題になり、結果、リックはスター・メーキャップ・アーティストの仲間入りを果たした。
そんな歴史の生き証人のようなツーホーンズが、飛騨高山のここにあるのが面白いよね。
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TV特番スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル


どういう経緯で店主のものになったかという話のまえに、ツーホーンズの変遷を少しばかり。
もともとツーホーンズはグレーっぽい色をしていたけれど、SWが公開された1977年のサンクス・ギビング・デイ(11月第4木曜日の感謝祭)にTV放送された特番“スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル”にゲスト出演した際、いまの色に化粧直しされた。
最初の撮影で表面のラテックスゴムが剥がれたり、傷ついたりしてダメージがひどく、グレーよりも濃い色でボロを隠す必要があったんだって。
そして3年、ツーホーンズはリックんちで大切に保管されてきたわけだけれど、日本から来たモンスター好きの青年(つまり店主)にあげる気になったと。
じつは前日、1980年の秋のある日、どういういきさつだったか忘れちゃったけれど、ユニバーサル・スタジオのジョン・ランディス監督のバンガロー(オフィスでも小ぶりの1軒屋をこう呼んだ)でジョンとリックに会えることになり、こういう日のために用意しておいた日本土産を持参した。
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↑ いまでも写真だけは大事にとっているところが店主らしい。


東京時代、コツコツためてきたムカシモチャのうち、ブルマァクのゴジラ(左)をジョンに、箱入りマイティコング(右)をリックにプレゼントしたのだよ。
こうして翌日、リックのワークショップに招待されたとき、お返しだよと渡された段ボール箱の中にあれ、ツーホーンズが入ってたというわけ。
オモチャミチは身を助ける、ことわざ通りでありました。
あまりのうれしさに心臓が止まりそうになった若き日のこと、そういう店主をやさしく眺めるリックの笑顔を、いまも鮮明に思い出すことができる、ウウッ。
ツーホーンズを店主が持ってると知ったら、きっとジョージ・ルーカスさん、欲しがるだろうね。
もし値段きかれたら、どれくらいのけん制球、投げようかしらね。
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ツーホンズが入っていた箱。クリック拡大してよく見てごらん。
右上にハリウッドにあった時代の最初期ILMのスタンプが押されている。
白ワクの中はそのスタンプの拡大画像。


by tomenosuke_2006 | 2007-01-02 23:36 | プロップ
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