ネオン集め その4 我が倉庫へ。
夢中になって集めてきたものがいったいどれくらいの嵩(かさ)になったのか、一度ぜんぶをきれいにならべて一覧してみたい。
棚に飾ったり、専用の部屋をこしらえるまではよかったけれど、それでは収まらなくなって箱に詰め、そんな箱が次々に増えて積み上げられていく。
しばらくたつと部屋は箱で溢れ返り、とうとう別の場所に分けて保管することとなり、あげくに何が、どこに、どれくらいあるのか分からなくなる。
店主のコレクションはいつもそんなぐあいに膨張し、あるとき幸運にも一覧できる機会が訪れ、すると徐々に熱が引く仕組みになっている。
たとえばLA住まいしていた1980年からおよそ10年がかりで集めたアメリカン・デコの2000点におよぶコレクション(絵葉書から自動車まで)は、東京新聞さんのおかげで美術展『1930年代のモダンスタイリング/アメリカ・デコ展』として全貌を現わし、我ながらそのボリュームと美しさに驚嘆すると、もうこれで十分だと思ったのだった。
いまは名古屋国際デザインセンターの所蔵品となり、かつての店主のコレクションだけでデザイン・ミュージアム(つまり博物館1軒)が構成されている。
1985年に恐竜画家ウィリアム・スタウトからプレゼントされた1枚の絵がきっかけで集めた恐竜復元画と復元彫刻のコレクションは、トヨタの池袋アムラックスホールで開催された『超恐竜展』のあと、福井県立恐竜博物館ダイノギャラリーという最高の環境で第二の人生を送っている。
じつは留之助商店開業の動機も小売りの興味より、山積みされた段ボール箱からオモチャを取り出して、きれいに、お店風に陳列してみたいと思ったから。
さいわいオモチャに関しては、いまのところ熱が冷める気配はなさそうだ。
熱病型の“収集”から道楽型の“仕入れ”に気分転換でき、オモチャとの関わりにも変化が生じて、コレクターするより店主を演じる方が楽しくなってきている。
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左:東京新聞主催『アメリカン・デコ展』(1990年)の展覧会図録。コレクション撮影は友人の境隆行氏。原稿執筆から装丁にエディトリアルデザインまで、ぜんぶ店主が仕切らせてもらった自慢の1冊です。
右:愛知県美術館/中日新聞主催『アメリカン・ドリームの世紀展』(2000年)の展覧会図録。この展覧会ではじめて店主は自分のネオン・コレクションを一覧したのだった。自分でいうのも何だけれど、あまりの美しさにウットリしてしまった。関係者のみなさん、ありがとうございました。


ネオンを求めてルート66をいっしょに旅したアンティック・ショップOff The Wall(オフザウォール)のデニス・ボーゼスからは、年に2、3回、フェデックスでレストアまえのネオンの紙焼きが届いた。
アメリカン・デコからは足を洗ったと伝えているのに、建築デザイナーのケン・ウェバーがウォルト・ディズニーの依頼でたった60脚だけ作ったといわれているスタジオ・エクゼクティブ用の椅子“エアラインチェア”や、ヘイウッド・ウェイクフィールドのライティング・デスクの写真を同封してきて、店主の弱いところを突いてくる。
電話で交渉しネオンのレストアを依頼することもあれば、LAに行ったついでにレストア予定のものを吟味することも。
両面仕様のネオンはデニスのアイディアでふたつにスライスされ、程度のいい片方を店主が、もう一方をハードロックカフェが買ったりした。
個人では天使にラブソングを(1992年)で当時絶好調の女優ウーピー・ゴールドバーグと分け合うことも。
こうして集めたネオンはあのルート66から10年目の1999年、保管先のLA日通の倉庫から運び出されて船に載り、ついに下呂市の我が倉庫へやって来た。
梱包から船積み、国内輸送から開梱までを名古屋日通美術品課のベテラン、日比野さんと磯部さん(お二人とも定年退職されている)にお願いし、一部は倉庫で点灯できるように組み上げた。
何という幸運だろう、まるで示し合わせたように愛知県美術館で20世紀のアメリカをアートで総覧する『アメリカン・ドリームの世紀展』の企画が持ち上がり、協力を求められることに。
もちろん店主のネオン・コレクションが、この企画展のもっともダイナミックな展示となった。
コレクションの貸し出し協力費として受け取った金額は2000ccクラスのクルマの1.5台分、それはちょうど日通さんに支払ったもろもろの費用に相当し、借金がきれいに穴埋めできたのだった。
広大な展示室ですべてのネオンを同時に見られる最初で最後かもしれない希少な機会が与えられて、これ以上、望むものなど何もなかった。

というのはウソで、じつはディズニー・スタジオのエアラインチェアやヘイウッドの机、その後もいろいろ買ってしまっていたから、できればもうちょっと色をつけてほしいと思う店主なのでした。
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愛知県美術館『アメリカン・ドリームの世紀展』の会場入り口に飾られたNEONっていう名のネオン。コレクション中、唯一の両面仕様だ。近くを歩く人と比較すれば、その異様な大きさが想像できる。少なくともちょっと部屋に飾りたいと思えるサイズではない。


『アメリカン・ドリームの世紀展』のおかげでネオン熱が完全に冷めたわけでもないけれど、ネオン・コレクションはすべて留之助ホームページのこちらで展示販売中です。
とってもキレイ、どうぞご覧ください。
by tomenosuke_2006 | 2007-02-13 03:49 | ムカシモチャ
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