チルトのファットキャップの話をしたときとか、最近ではスコォクのマニアッ君の紹介記事なんかで、何気にEd "Big Daddy" Roth(エド“ビッグ・ダディ”ロス)の名前を使ってきたけれど、中には知らない人もいるんだろうね。
1960年代のアメリカで大ブレイクしたHOT RODビルダーにしてピン・ストライプとブラシ・アートの達人、あのラットフィンクの生みの親といえば話は早いかも。 エドは1932年3月4日、LA生まれ。 子どものころからのクルマ好きで、大学卒業後の1950年代前半は軍隊生活を経験、退役するころには数台のカスタムカーを所有していたという。 家族を養うためシアーズで装飾係として働きながら、クルマへの夢が捨て切れず、誰も見たことのない最高のカスタムカーを手作りするぞの一心で、暇さえあればガレージにこもり作業に没頭した。 材料のほとんどはジャンクヤードから拾ってきたスクラップパーツ、エドのキャリアのはじまりだ。 ![]() いまでこそFRPボディのクルマなんて珍しくもないけれど、これって必要に迫られたエドの苦肉の策、60年代アメリカの自動車産業界を驚嘆させたのだ。 こうして生まれたホットロッドの第1号車はOUTLAW (アウトロー)、勢いに乗って次々に目を見張るデザインのカスタムカーを誕生させていった。 週末になると必ずどこかで開催される自動車関連のローカルイベントに出かけていっては、奇怪なモンスターやホットロッドの絵をあしらったオリジナルTシャツを売って資金を稼ぐ、そんな自給自足、独立独歩の日々だった。 やがてエドのTシャツやポスターは人気を集め、大勢の若者が彼のブースに群がるようになった。 とくにもてはやされたのが、ご存知ラットフィンク。 あの薄汚いネズミ野郎は、育ちがよくって上品なミッキーマウスに対する不良少年たちの果し状、アングラでカウンターカルチャーな精神を見事に具現化していたのだった。 ![]() 大量の注文をこなすため従業員を雇い、ホットロッド・カーのオーダーメイドやキャラクター商品を製造販売する会社を経営するまでになった。 その人気に着目したのがプラモデル・メーカーのRevell(レベル)で、商品化権を取り付けるとエド・キャラのキットを製造販売、大ヒットさせた。 もちろん日本にも輸入されて、事情を何も知らない少年時代の店主としては、このムチャクチャな造型越しにアメリカを夢見、憧れたものである。 ちなみにエド・ロスという名前にミドルネームのようなビッグ・ダディが付け加えられたのはこのとき、レベルの宣伝マンのアイディアによる。 ![]() 店主、1990年にエドのLAのアトリエ兼自宅を訪ねたことがあるんだよ。 あるイベントで彼の絵をもとにしたライフサイズのモンスターを登場させるという企画がとおり、いろいろお願いに上がったのだ。 一世を風靡した人にしては質素な住まい、飾りっ気がなくとっても気さくで、うーん、ちょっとアルコール入ってたかなぁ、あるいは飛んでたかなぁ、話はトントン拍子でまとまったかに思えたけれど、数日後、お約束のギャランティの10倍もの金額を吹っかけられて話はご破算。 エドによると、日本人のビジネスパートナーから10倍以上の金額を請求すべきだと言われたとか、いったいその日本人って誰だったんでしょう。 おっと、話はエド物語になっちゃってたけれど、本題はね、そのエドが60年代にTシャツ用にせっせと描いた絵(上の絵もその一部)が最近大量に発見され、ハリウッドのアートギャラリーLa Luz de Jesus Galleryで、たったいま展示即売会が開催されてるってことだったのだ。 スゴイよ値段、ゲイリー・ベースマンやティム・ビスカップやシェパード・フェアレイの10倍以上だね、ン百万円ばっかり。 眺めるしかございません、いまは亡きエド“ビッグ・ダディ”ロスとは、遠くにありて思う“者”ってか。 それからね、エドには断られたけれど、エドもどきのモンスターは作ったんだよ。 いまも店主の倉庫で眠ってる、大きすぎて飾る場所がございません、高さ2.5メートル以上、下のリンクを突いて見てください。 ![]() もちろん怪物が運転するホットロッドはエドと同じFRP製である。
by tomenosuke_2006
| 2007-06-10 03:22
| ロウブロウアート
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