彫刻家が気になる。
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7月、サンディエゴで開催されたUUPのWWS(Wheaty Wheat Studios)のブース。
スター・アーティストの絵を立体化した魅力的なプロトタイプが展示されていた。


ダニーやニンギョー・プロジェクトのように、お決まりのフィギュアの表面にアーティストたちが独創的な表現を試みるオブジェモチャを、とりあえず『立体キャンバス作品』と店主は呼んでいる。
それに対してアーティストたちが描いた絵をもとに創られたオブジェモチャは『リッタイズ(立体化)作品』。
SDCCから戻って以来、店主は後者のリッタイズ作品について何かと考えるようになっていた。
元絵を描いたアーティストばかりが話題になるけれど、当の店主もそればっかりだったけれど、その絵をリッタイズしたのは彫刻家(原型師)の仕事であり、彼らこそ影の立役者、オブジェモチャの下の力持ちではないかと。
もともと店主は彫刻家が大好きだった。
ハリウッドで活躍するスペシャル・メイクアップ・アーティストという彫刻家たち。
とりわけ天才的なリック・ベイカー、ロブ・ボーティン、クリス・ウェイラス、スティーヴ・ジョンソンらは、怪物作りにおけるもっとも重要なパートは“粘土彫刻”につきると口を揃えて語ったものだ。
粘土彫刻、つまり原型が型どりされ、そのモールドを使ってスリップ・ラバーやフォーム・ラテックス製のモンスターマスクなどが作られる。
で、オブジェモチャのリッタイズ作品だってプロセスは同じ、なのに店主、一度もオブジェモチャ界で働く彫刻家について話を聞いたことがないのだった、SDCCと同時開催のUUPで主催者WWS=Wheaty Wheat Studios(ウィーティ・ウィート・スタジオ)のみなさんと懇談するまでは。
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WWSの幻のヒット作、ジョー・レッドベターのファイヤーキャット。
いまではもにすごいプレミアで売買されている。(左はその原型)


むかしビリケン商会さんがせっせとソフビ化したB級SF映画のノスタルジックなモンスターには、店主、どっぷりハマった経験があるけれど、このとき注目を集めたのが原型師のハマ・ハヤオ氏。
スペシャル・メイクアップ・アーティストやアニメーション・モデルメーカーのオリジナル作品を、オモチャとしてちょうどよいサイズに復元しただけでなく、粘土原型のひと彫り、ひと彫りに“愛”を感じさせて、作家性に満ち、SF少年や模型ファンを大いに魅了したのだった。(日本には昔から縁の下の力持ちをきちんと評価する“礼”というものがあったんだよ)
で、店主がずいぶんまえから気になっていたのが、WWS製の一連の作品群。
とりわけジョー・レッドベターをオブジェモチャ作家として一躍有名にしたミスター・バニーとファイヤー・キャットは、人なつっこさと完全なる拒絶、徹底的なイジワルさが立体ゆえに強調されて、ここだけのはなし、原画以上に鋭く光っていた。
UUPではじめてWWSのセールス主任Deborah Yoon(デボラ・ユーン)に会ったとき、そこらへんのことを話すと、ブースの準備に追われる彼女の夫で社長のRichard VanOver(リチャード・ヴァン・オーバー)を連れてきた。
じつはリチャードこそWWS作品の原型師であり、1990年代にハリウッド映画やテーマパークの造型部門で働いたあと、オブジェモチャのプロトタイプ製作の専門工房としてWWSを設立、のちにオリジナル商品も製造販売するようになったのだった。
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UUP会場での一コマ。
左から2人目の女性がデボラ・ユーン、右端がリチャード・ヴァン・オーバー。
Photo Courtesy VINYL PULSE


元来、映画スターより作り手さん、裏方さんが好きでハリウッドに住んだ経験のある店主としては、最近、オブジェモチャの裏方、つまり原型師であり彫刻家のみなさんにとくに興味をそそられるのだった。
これで身軽ならアメリカ・オブジェモチャ界の製作現場や中国の工場など、ことごとく取材して、1冊、本でも書いちゃうんだけどね。
とにかくリチャード・ヴァン・オーバーが原型を担当したキャンディキラー・キーチェーンの小ぶりゆえ細密な仕事ぶりには、店主、改めて感服いたしました。

↓ まだまだ在庫あります、買ってちょーだい。
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by tomenosuke_2006 | 2007-08-20 19:55
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