ゲイリー・ベースマンの野生の鹿少女。
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ロウブロウ・アーティストの画集を多数出版しているアメリカのBABY TATTOO
留之助ではそこの新刊やら、気になる既刊本を取り扱うことにしたから。
で、まずはこれ、ゲイリー・ベースマンのMy Hunger for Venison。
理屈好きな彼らしい書名だね、『ヴェニソンを渇望す』。
“ヴェニソン”という言葉には“鹿肉”とか“獲物”という意味もあるけれど、ここでは画集の主人公“野生の鹿少女”(wild deer girl)のことをヴェニソンと呼んでいるから、こんな感じの訳でいいと思う。
収録作品は2006年の春、旅先のバルセロナでゲイリーが見た妄想を元にしているとか。
とにかく縦25センチ×横33センチの大判ハードカバーで64ページは見応えある。

私は妄想の中で、森へ逃げ込み隠れようとする自分を見た。
木々の間を走り抜けているとき、あやまって木の枝にぶつかり、しばらく意識不明に陥った。
気が付くと、鹿の角を持つ全裸の美しい少女が鼻を押し付けるようにして私の匂いを嗅いでいるではないか。
唇のまわりの乾いた血を舐め、さらに舌で傷口を癒してくれる。
なんとやさしい子かと思う間もなく、野生の鹿少女は次の瞬間、私をむさぼり喰いはじめるのだった。

画集はその鹿少女の無邪気で残酷な森での生活を紹介している。
色鉛筆によるスケッチ風やら油絵、ビンテージ本のページに描いたミックスドメディア作品など、ぜんぶで32点。
いずれも左ページがキャプション、右ページが作品という構成で、これなら好きな絵をページごと切り取って額装もできそうだ。
おっとそれから、異様に分厚い裏表紙には秘密があって、縦18センチ×横11センチ、32ページのスケッチブック(下)が裏表紙内側に加工された凹面部分に入っている。
これはゲイリーがバルセロナ滞在中、おもにCafe Rosalでお茶をしながら描きとめた妄想の一部始終を復刻したもので、画集の収録作品はこのスケッチを元に帰国後仕上げられた。
見比べるのも楽しみのひとつ、このスケッチブックだけでもけっこうお腹がふくれます。
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by tomenosuke_2006 | 2007-11-04 23:59 | 書店入荷新着情報
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