2008年版、それ行けスマート。
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SPY-TV全盛の60年代に登場し、およそ5年間、ぜんぶで138話も作られた傑作パロディ番組Get Smart『それ行け、スマート』が、『40歳の童貞男』のスティーヴ・カレルと『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイのコンビでリメイクされ、日本のことは知らないけれどアメリカではこの夏公開になる。
で、そのたった75秒の予告編を観ただけで大いに笑ちゃって、タイトルとテーマ曲を借りただけの別物映画『ミッション・インポッシブル』や『アイ・スパイ』とはまるでちがういい感じなんで紹介したくなったのだ。
3年前にSIDESHOWから発売された絶版12インチのマックスウエル・スマートとチーフも店主の趣味で在庫しているし、そのセールスもかねようかと思いながら、さて、何から書きはじめていいものか。
SIDESHOWから12インチが出たのはオリジナルのスマート俳優ドン・アダムスが82才で他界した2005年だったけれど、追悼の意味があったかどうか詳しくは知らない。
悲報を聞いて真っ先に思ったのは1981年の劇場映画The Nude Bomb『それ行けスマート/0086笑いの番号』や1989年のTVムービーGet Smart Again!『それ行けスマート/世界一の無責任スパイ』(いずれも日本ではビデオ公開)が、悲しいかな少しも面白くなかったことだった。
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81年版はスマートのパートナーの99号役、バーバラ・フェルドンが出ていないのがさびしすぎたし、エマニエル夫人のシルヴィア・クリステルがなけなしのお色気を振りまいていたことが印象に残るのみ。
89年版は、みなさんお年を召されて精彩を欠き、ご年配専門のカラオケ・レパートリーよろしく、一部で盛り上がるだけの懐メロ劇場と化していた。
いちばんの原因は脚本だろうと思ったりした。
全編をユーモアらしきもので塗り固めても、どれもこれも60年代の複製ばかり、お笑いに焼き直しは利かないんだよ。
脚本家がまず自分のアイディアに笑い、その脚本を読んだ監督や俳優が腹をかかえて笑う、で、みんなで噴き出しそうになるのをこらえながらドラマに仕立てる。
幸福で楽しい現場の様子さえ感じさせてくれる出来立て、撮り立て、ホッカホカの笑いが、TVの『それ行けスマート』には満ちていたのだ。
なんたって原案・脚本が当時、天才の出現と騒がれ、いまでは押しも押されもしない映画界の大御所のバック・ヘンリーとメル・ブルックスなんだから当然か。(なんか話が長くなりそうな気配)
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さっと流すけれど、バック・ヘンリーは『卒業』(1967)や『イルカの日』(1973)の脚本のほかに『天国から来たチャンピオン』 (1978)を監督しているし、メル・ブルックスは『ヤング・フランケンシュタイン』 (1974)や『スペースボール』 (1987)など数々の名作パロディの脚本監督で有名だ。
さらに付け加えるならバック・ヘンリーの『卒業』でミセス・ロビンソンを演じたアン・バンクロフトがメル・ブルックス夫人であり、そのアン・バンクロフトが舞台女優ケンドール夫人を演じたデイヴィッド・リンチの『エレファントマン』(1980)はメル・ブルックスがプロデュースした。
つまりリンチを見出し、メジャー監督として大成するきっかけをつくったのはプロデューサーとしても辣腕なブルックスその人なのだった。
そんなことより、2008年版『それ行けスマート』の脚本は店主未見の『恋するレシピ 理想のオトコの作り方』(2006)のコンビ、トム・J・アッスルとマット・エンバーだけど、バック・ヘンリーとメル・ブルックスのような屈指の映画人になれるかどうか。
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少なくとも予告編にみる新スマート役のスティーヴ・カレルは、映画史上もっともトンマなスパイのマックスウェル・スマートと絶妙の化学反応を起こしたみたい、若かりし日のドン・アダムスの気配を漂わせている。
脚本の出来もいいんじゃないかしら、きっと。
99号役のアン・ハサウェイもコメディの分かるお利口さんだし、往年のバーバラ・フェルドンのように清楚でチャーミングだし、これまたいいんじゃないでしょうか。
次々にコミックを映画化したり、外国映画や昔のヒットTVをリメイクしてアイディアが尽きたといわれるハリウッドだけれど、きちんと作ってくれたら文句はいわないよ。
たぶんどこかで『0011ナポレオン・ソロ』の映画化の話も進んでそうだね、コワイねぇ。
ちなみにオリジナル99号のバーバラ・フェルドンはナポソロTVの第1シーズン25話The Never-Never Affair『拾った危機』にゲスト出演している。
またウィキペディア・フリー百科事典のメル・ブルックスのページで、ブルックスが『それ行けスマート/0086笑いの番号』の脚本家として紹介されているけれど、それは間違い。
英語でいうところの“based on characters created by”、つまり“彼の創作したキャラクターに基づく”という意味だからね。



じつは99号のバーバラ・フェルドンとアンディ・ウォーホルがアメリカ版TVガイドの1966年3月5日号で共演してたんだよ。
新しもの好き、オシャレ好きなウォーホルがバーバラをモデルにアートして、彼女がいかに60年代、旬な女優だったか想像つくよね。
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by tomenosuke_2006 | 2008-01-05 18:04 | TV・映画・ビデオ
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