ロボットとドーナツに憑かれた男の展覧会。
2006年にEric Joyner(エリック・ジョイナー)が描いた2点の絵がけっこうトラウマだ。
ひとつは『ザ・ロープ・ショー』と名付けられた作品。
首つり用に結んだロープを前に腰を落とすか弱そうな黄色のロボットに、中央のロボットが何やら死に際の説教か。
憐れむような眼差しで、死は恐るるに足らず、死んでしまえばそれっきり・・・。
右のいかついロボットがさっさと済ませろと急かしている。
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もうひとつは『ザ・ラスト・スナック』(トム・ウルフのザ・ライト・スタッフとは一切関係ない)。
最後の晩餐ならぬ最後のドーナツを食べきれずに吊るされたロボットの絵だ、無念そうな。
どちらもモチーフになったロボットは実在のティントイで、デザインや表情に創作は入っていない。
一見、悲しげな顔も、もがき苦しみ飛び出た目さえ、はじめっからそうなっていた。
なのに魂を感じるのは、とりわけ“死”を題材にしているからなのか。
プレス成型されたり、キャストパーツで出来た無表情のロボットを相応の舞台に配置して、アイデンティティーまであたえてしまうエリック・ジョイナーの企みにヤラれたと思った。
彼の描くロボットたちの半分は人並みの生活をしている。
場末のバーの片隅で物思いに耽る者もいれば、夕陽を眺め黄昏る者も。
ときにドーナツが人らしさを表す小道具として使われる。
あとの半分のロボットたちはSF的なシチュエーションの中、宇宙を探検したりゴジラやキングギドラと戦う。
そのときドーナツは背景の巨大な山となり、あるいはUFOのように空を舞い、非現実に拍車をかける。
興味深いのはいずれもロボットたちが動いてそこまで来たことを示す足跡や軌跡が描かれていないことだ。
まるで大きなジオラマセットに、あるいは実際の風景の中にオモチャのロボットをポンと置いたような感じ。
動きがあるようで、ない、ポーズを決めて飾った、これはスケールの大きな静物画といえそうだ。
ロボットとドーナツに憑かれた男の展覧会。_a0077842_114544.jpg
1/2スケールのロビーとフルスケールのフライデー(いずれも高価なプロップ・レプリカ?)を描いたこの新作を見たら、フライデーって母親が似合うオカマちゃんだったんだと分かりました。
そんなロボットとドーナツに憑かれた男、エリックの作品展ARTIFICIAL ENLIGHTENMENT(人工の悟り)が9月6日からLAのCorey Helford Galleryで開催される。
会場ではドーナツが振る舞われるとか。
2週後の土曜日には店主も出かけていけそうだけれど、先着400名に配られるというエリックの新作ポスターは手に入らないだろうな。

エキサイトブログにいつの間にかYouTubeが貼れるようになってたんだね、なわけだから。


by tomenosuke_2006 | 2008-09-04 11:30 | ロウブロウアート
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