こういうの、大好き。
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ゴム風船にロウブロウ・アーティストたちが絵を描いた風船アート作品集『ラテックス・フォア・ファン』は、不変とか永遠というのが苦手な店主にはうってつけのテーマだったね。
風船アートのいずれ萎んでしまう一抹さに、強く惹かれた。
ロン・イングリッシュのDVD『ポッパガンダ』やゲシュタルテンの本『アーバン・アート・フォトグラフィ』に収録されているようなグラフィティが好きなのも、生い立ちの大胆さ、いつまでもそこにあるとは限らない短命の潔さに傾倒するからなんだろう。
そもそもロウブロウ・アートとは権威にあらず、気兼ねとか心配とは無縁の気楽さ、ナンタラ評論家が能書き垂れたり口出ししない、アーティストとオーディエンスが同じ地面に立つ、あえていうなら共生感に満ちた、となりのお姉さん的芸術なのだ。
という見地から、となりのお姉さんならぬ、いまいちばん気になるとなりの画家とその絵を紹介したい。
まだ作品集などは出版されてはいないけれど、これぞ一抹アートの大本命、テキサスのScott Wade(スコット・ウェイド)が果てしなく描き続けるダーティ・カー作品である。
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いまではあまり見かけなくなったけれど、LAに住んでいたころ、恐ろしく汚っねぇクルマとすれ違うことがあった。
ボコボコになったヤツ、古雑誌やコーラの缶やピザの箱などで後部座席がゴミ箱状態のヤツ、かれこれ1年以上も洗車してないんじゃないかと思わせる埃まみれのヤツ。
もとから絵を描くのが好きだったスコット・ウェイドは、ある日、砂埃で汚れた愛車の窓にイタズラ描きしたときひらめいた。
もっと激しく、万遍なく汚れていれば、ほこりの厚みで陰影もつけられて、絵の具を重ねるのではなく、埃を削りとって描く新しいアートになるんじゃないかと。
かくしてダーティ・カーと名付けた創作活動を開始、徐々に人々の話題にのぼり、ついには店主の知るところとなったのだった。
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ミニクーパーのリアウィンドーに描き上げられたモナリザ・オン・ザ・ゴッホ。

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夜、通り雨にみまわれて。

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一夜明けたら、こんなぐあいに。

ときには創作途中で雨に降られることもあるらしい。
スコットがTVの取材に応えて語ったこんな言葉が印象的だった。
「どれがいちばんのお気に入りかだって? いつまでもそこにあるわけじゃない、早ければひと晩で消えてしまう絵だよ。だからいちばんのお気に入りは、次ぎに描く絵だろうね」
芸術作品には作者のサインが記されるものだけれど、ダーティ・カーの場合は面白い。
スコットは自分の名前の横に作品が完成した時間を書き添えるのだ。
月日でもなければ、年でもない、時間、すなわち刹那。
こういうの、趣味である。


by tomenosuke_2006 | 2008-09-07 10:56
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