ブレランのニーゼキさんが・・・
プレドニンの副作用だと思うのだけれど、店主は入院中からいまも1時間寝て、2時間起きるみたいな不規則な生活を続けている。
が、慣れてみると、これがじつに都合いい。
とくにeBayやったり、販売開始と同時にオーダー入れなきゃ手に入らないような海外の限定モノを買い付ける場合、タイムラグの関係で深夜から夜明けにかけてにわかに忙しくなる。
そういうときに、薬が貢献してくれているというわけだ。
で、その朝もロウブロウアートの大御所で、かつてTVショーピーウィー・ハーマン・プレイハウスの美術監督もしたゲーリー・パンターモノを狙っていた(この人のことも、いずれ書きたいと思ってます)。
彼のヒット・コミックスJINBOのハンドメイドのヌイグルミで、11年まえの1995年に100個だけ作られたという、まだデザイナーズトイというカテゴリーがなかった時代のもの。
しかも奇跡のMIB(メン・イン・ブラックじゃなくってミント・インザ・ボックス)で、NYの書店がeBayに出品してたのを見つけた。
すでに入札件数は20をこえ、終了時間まえ数秒の攻防になることは想像できたから、その時間、日本時間の朝5時には万全の体勢でノートブックのまえに鎮座した。
意気込みがちがうから、もちろん勝(買)った。
その落札の瞬間がたまらない。
コレクターにはいろんなタイプがいるけれど、店主などは、ちょっと毛色の変わった部類かもしれない。
変で普通でないモノ、まえから探していたモノ、憧れの品など、つまりお目に叶うオブジェモチャと出会い、手に入れることができると、もうその時点で9割がた満たされてしまう。
山のようなコレクションは集めたくて買ったのではなく、出会いを尊び、買う快感に耽っていたら集まってしまった、といった方が正確なのだ。
だから、お店でコレクションを売ることに抵抗はない。
むしろすべて一度は店主が情愛を傾けた品々、玩具問屋が回してくれる商品とはLOVEの格がちがう。
どれもこれも偏愛のたまもの、自信の品なのである。
一度は手にしてみたいと思っていた念願のJINBOが手に入り、eBayから落札通知が届いたそのすぐあと、ブレラン研究家でコレクターのニーザキさんからメールが入った(早起きなんだなぁ)。

「さて、自慢話をひとつ」
「ブレランファンなら、いつかは・・・のアイテムをゲットしました」
「コレ↓です」
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「今私のパソコンの横で鎮座してます」
「朝から自慢でした」

ニーゼキさんは、およそ四半世紀のあいだブレランに関するものなら何でも、資金が許すかぎり次から次に集め続けている真のコレクター(収集家)である。
そんな人が新たにゲットしたのが、上の写真のeBayに出品されていたムービー・プロップ・ミニチュアで、落札金額は締めて800ドル。
長さ35センチ足らずの薄い1枚の銅板に、およそ10万円を注ぎ込んだのだった。
それは未来都市のランドスケープのミニチュアセット用に、エッチングで作られたビルのシルエットのひとつで、何百枚(もしかしたら何千枚)も作られたうちの、わずかに現存する1枚。
出品者はそれを専用のディスプレーケースに入れ、スタート価格350ドルで出品し、最終的に800ドルで落札されたのだった。
が、店主は1980年代のある日、いまでは800ドルのエッチングを、値段に換算すればおよそ8千ドル分か、それ以上を、この足で踏み潰していたことになるのだ。
そのことをニーゼキさんにレスると、すかさず「デロリアンに乗ってひろいに行きたいです」。
そこで店主、デロリアンを横取りして、一足先にあのときの様子を確認してくることにした。

ブレランの撮影が終わったころ、映画ジャーナリスト時代の店主は何度もSFXスタジオEEGを訪ねていた。
講談社と進めていた日米バイリンガル出版のSFX本について、ブレランのSFX監督、ダグラス・トランブルと打ち合わせを重ねていたからだった。
この企画はSFX界のトップアーティスト3名を厳選し、彼らのキャリアと作品と人となりを、それぞれ1冊のハードカバーにまとめ上げるというもの。
ミスター・トランブルは友好的で、当時彼がいちばん力を入れていた新映画システム“ショースキャン”を店主のために試写してくれたり、素晴らしい時間を過ごさせてもらった。
撮影が終わり、用済みとなったブレランのミニチュアセットが、しばらくスタジオに放置されていた。
用済みとはいっても、そのまま廃棄されるわけではなく、いくつかは再利用のため同業者に売られたりするのだ。
たとえばポリススピナーが離着陸した警察ビルディングは別のSFX関係者が買い上げ、屋上部分を切り離し、未知との遭遇特別編でマザーシップ内部の天井に流用された。
その未来都市の廃虚のまえを、オフィスからいちばん近いトイレや、試写室へ行くとき、かならず通り抜けたものだった。
通り抜けながら、例のエッチングのビルのシルエットが山ほど、大きなゴミ箱に打ち捨てられていたり、一部、床に散乱しているのを見た。
実際、床の上の何枚かを踏まなければトイレに行けないときもあった。
どちらかというと物欲の強い、記念にもらえるものならなんでもいただくタイプの当時の店主だったが、なぜかゴミ然としたエッチングには触手が動かず、そのまま踏みつけてオフィスへ戻ったのだった。
いま思えば、そんな扱いを受けたゆえに現存するものがきわめて少なく、結果あんな値段になってしまうんだろうなぁ。
ニーゼキさん、奇跡的に生き延びたその1枚には、そんな過去があったのです。

ところで日米バイリンガル本の企画は流れてしまった。
SFX界のそれぞれ異なるフィールドで活躍するビッグネーム3名という講談社側の要望に対して、ダグラス・トランブルとスペシャル・メークアップ・アーティストのリック・ベイカーまでは決まったのだけれど、どうしてもあとのひとりが思い浮かばないというか、アメリカにはいなかったのだ。
そうこうしているうちに徐々に創作意欲は減退し、別の本の仕事がはじまって・・・。
せめてもの救いはショースキャン・ビジネスの引き合いが多くなり、ミスター・トランブルがまえにも増して多忙な毎日を送るようになったことだった。
おおーっ、突然、睡魔が襲ってきた。
次のeBayまでおよそ3時間、ちょっと寝ます。
次は何を狙ってるかって?
じつはね、1964年から65年にNYで開催された万博のパビリオンのひとつで、モーターオイル会社“シンクレア”がスポンサードした恐竜庭園のスーベニアを集めているのです。
とくに60年代の解釈からなるプラスチック製の不格好な恐竜フィギュアが、じつにいい。
あっ、そこのあなた、店主の入札のジャマしたら、おっこるからね。
# by tomenosuke_2006 | 2006-08-06 23:52 | プロップ
ツオイ看護師さんのお話?
思ったとおり、病院出ちゃうと、ブログがなかなか更新できなくなるんだよね。
っていうか、病院で使ってたノートブックを家の30インチのモニタにつなぎ、でっかい作業スペースでお店のホームページを思いっきり作りたい・・・これが入院中のいちばんの夢だった(?)から、自宅療養しながら、そればっかりしていた。
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途中、8月1日には本当にひさしぶりに映画にも出かけた。
関市のシネックスマーゴへ。
夫婦50割引をきかせようかと思ったら、その日は1日、映画の日で、運転免許証を提示しなくても1000円。
ロードショー1本=1000円というのが、ま、ギリギリ許せる値段だと思う。
このまえ行ったアメリカでマチネー(昼興行)割引が4ドル50(約585円)だったけれど、これ、私が住んでいた80年代から変わっていないような気がする。
夕方から割引されなくなっても、だいたい5ドル(約650円)だから、やっぱり日本は高い。
ちなみに調べてみたらフランスが4ユーロ(約600円)、韓国が6000ウォン(約600円)ときた。
ますます日本は高い。
いつだったか円高ドル安がすすみ、輸入製品が軒並み値下がりしたとき、映画代だけが逆に値上がって、日本の映画興行界って変わってるなぁと思ったものだ。
とにかく日本という国は海外の、とくに利益優先のハリウッド映画にとってはおいしいマーケットではあることは確かだ。
なんたって観客動員数がアメリカ本国の半分以下でも、興行収入は同じか、それ以上になるんだから、トム・クルーズだって日本の女性ファンといっしょに貸し切り新幹線に乗って愛嬌振りまくわな、である。
そう、もともとスパイ映画好きなところへもってきて、入院中にあのお祭り騒ぎのプロモーション風景をTVで目にしてたから、退院記念には旬なM:i:IIIでも観てみようといことで、関市のシネックスマーゴへ出かけてきたのだった。
ブライアン・デ・パルマ監督の1作目(1996年)のとき、元ネタのTVシリーズのような「個性豊かな仲間が一致協力し、不可能を可能に変える知能戦の醍醐味」が、映画版にはまるでないとか、いくつかの反則を黙認できない古くからの“スパイ大作戦”ファンの声を聞いたような気がするけれど、私は、もう、オッケーよ。
古いの恋しけりゃ、LD−BOXから出してきて観るぐらいのかいしょはあるし、導火線に火がついてはじまるあのテーマ曲を大音量で大きなスクリーン越しに聴けるだけで、血わき肉躍る。
ジョン・ウーのM:Iー2(2000年)も、ちがう映画だと思って臨めば、よし(年を重ねると寛大になるのです)。
そして映画の日割引で観たM:i:IIIは、じつにいいじゃないですか、であった。
シリーズ3作中、いちばん楽しめた。
知能戦+肉弾戦にも磨きがかかって、病み上がりの私がもしこのミッションに参加していたら、36回は死んでいたと思える激しさ。
敵役のカーポーティ俳優、フィリップ・シーモア・ホフマンもいいけれど、主人公トム・クルーズのフィアンセが看護師さんという設定が、いちばん気に入った。
というか、親近感がわいた。
映画はそのフィアンセがトムの目の前でカポーティ(役名やら俳優名がごっちゃになってるけれど、許せ)にぶっ殺されるシーンで幕を開け、時間は巻き戻されて、ことの発端へとさかのぼる。
そしてついにはトムのフィアンセ、我が愛しの看護士さんが、そんじょそこらのスパイよりもツオイところをみせるクライマックスへ・・・。
細かいことは言うまい、考えまい。
たとえば騒ぎの元の最終兵器のような「ラビットフット」が、いったい何なのか最後までわからないままだけれど、さっきもいったが、病み上がりに余計な心配、考え事は禁物なのである。
というよりも、詰め込んで濃い急降下型のアクションシーンを連続させて観客にのんびり考える猶予をあたえないアーキテクチャー(映画的構造)、それを実現した並々ならぬアビリティ(力量)、映画製作という大所帯の現場をまとめ上げたダイナミックス(力学)に、もう私のような病弱な中年は嫉妬さえ感じるのだ。
M:i:IIIは立派に若いパワー全開の映画なのである.
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勝手にこういう写真を使っちゃダメなんでしょうね。
映画会社さま、問題がありましたらコメントください。
即、削除させていただきます。


この映画のキメのひとつに、時間どおり、計算どおりにミッションが遂行されていく様を手際よくみせるというのがあるけれど、それはもはや様式美のごとく華麗に描かれて、憧れさえ抱かせてしまう。
で、私もあるミッションを帯びて、映画に挑んでいたのだった。
毎朝、服用している30ミリのプレドニンの作用でトイレが近くなりがちだから、チケットを買ってまず1回、席に着くまえに大事をとってさらに1回。
途中で席を立つ愚行だけは避けたいからと、そうしたにもかかわらず、やっぱり、しかもいいところで、情けないのであった。
・・・また、オシッコオチになってしまいました、失敬。
もういいかげんこのオチやめますと自分に言い聞かせながら、8月最初のブログを終わらせていただきます。
# by tomenosuke_2006 | 2006-08-05 00:27 | ネフローゼ症候群
退院します。
6月30日に急遽入院してから、まる1カ月後のきょう、7月30日。
お昼をいただいたら退院します。
昨夜は長良川河畔で花火大会があったらしく、窓から見える金華山の向こうから、威勢のいい音だけが聞こえてきました。
東5Fは、いつもと同じ夜でした。
消灯とともに静寂がおとずれ、遠くにうめく声が聞こえたり、ときたま近くのトイレで水の流れる音がする。
1日中、パジャマで過ごさねばならない人たちがぜんぶで61人。
落ち込んだり、気を取り直したり。
苦しんだり、楽になったり。
あるとき退院して行く人を見て、いつ自分に、そんな幸運がおとずれるのだろうかと思ったものですが、今度は自分がだれかにそう思われるのでしょうか。
だったら、自然に、幸せそうに振る舞おう。
次はあなたの番だと伝わるように。
ひとり減り、ベッドが60になっても、もうあしたにはこの部屋に別の人が入り、61人に戻る。
東5Fは、いつもと同じ日をむかえる。
さようなら、みなさん、どうもありがとう。
ひと月、付き合ってくれた畜尿ビンにも、ご苦労さんでした。
退院します。_a0077842_937251.jpg
このまえ下呂に外泊したとき、ダニーのスニーカーを持って来た。
いつか良くなって、こいつを履いて出て行くために。
それがたったの1週間で現実のものとなるなんて。
まるでウソのようなのは、それだけじゃない、このスニーカーの履き心地。
こんなに気持ちよく足を包んでくれる靴に出会ったのは、ひさしぶりだ。
病院でずーっと履いていた無印良品のサンダルにはお世話になったし、愛着もわいてしまったけれど、残念、浮腫みのとれたいまの足には大きすぎて、使い物にならない。
当分はダニーばっかり履いて過ごそう。
もしキツイと思ったら、それは体調不良を知らせる危険信号にもなることだし。
そう、県立岐阜病院最後の仕上げは、このダニーを履いてトイレへ行くこと。
尿採取用のカップにではなく、直接、小便器にぶちまけてやるのだ!
ドリーム・カムズ・トゥルー。
アイ・アム・ベリー・ハッピー。
# by tomenosuke_2006 | 2006-07-30 09:43 | ネフローゼ症候群
Frank Kozik
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今年2月、フランク・コジックのサイン会がSFのkidrobotで開催された。
彼がサインをしたのは70個限定のスモーキンラビット・ボンデージ版。
早朝から熱心なファンが集まりはじめ、午前11時の開店と同時に売り切れた。
ベースになっているのは10インチのスモーキンラビット。
いままでにも同じサイズの色ちがいや、去年のSDCCでは蛍光版が出たり、パリのセレクトショップcolette限定(激レア)なんてのもある。
で、今度のスモーキンラビットは、黒のSMコスの間から肌色の皮膚のぞかせる、くわえタバコのあぶないヤツ。
アナーキーなコジックらしい、10インチ・スモーキンラビットの最高傑作といえる。
この10インチ・スモーキンラビットのシリーズは、ダニーに次ぐ留之助商店のお気に入りだから、開店のあかつきには絶対コンプリートしてお披露目したい。
で、ロングビーチの近くに住むコレクターで、当店のバイヤーをしている友人とあらかじめ作戦を立て、彼のネットワークでSFに住む別の仲間数人が、その朝、kidroboのまえにならんだ。
こうして入手したボンデージが2ヶ。
世界に70個しかないうちの2個が留之助商店にあるなんて、スゴイと思いません?
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コジックといっても、ピンとこない人のために。
まえに紹介したゲーリー・ベースマンやティム・ビスカップたちとダニーやキューイで共作したりして、同じロウブロウ・アーティストとしてくくられるコジックだが、ちょっとカラーが異なる。
ゲーリーやティムが、コマーシャルなメディアで活躍する健全健康なカリフォルニアンなのに対して、コジックはマドリード生まれの中年移民。
タバコをスパスパやり、からだじゅうタトゥーだらけで、いい感じ出してる。
ロウブロウアートにはふたつの流派のようなものがあり、メジャーでコマーシャル派もいれば、コジックのようなアンダーグラウンド派もいる。
アンダーグラウンド派、つまり裏文化出身のグラフィティ・アーティストやタトゥー・アーティストたちのことで、コジックはその世界のヒーローでもあるのだ。Frank Kozik_a0077842_1232189.jpg1962年、スペインはマドリード生まれのコジックは、14才の時にテキサス州オースティンへ移住し、80年代にはアンダーグラウンド・ロック・シーンのコンサート・ポスターを描くようになり、いっきに成功した。
当店がこだわるコジックは、新しい分野で活動をはじめてからの彼。
つまりデザイナーズトイの世界で遊ぶようになってからのコジック作品を、とくにコレクションしている。
コジックのサイトで、彼のもうひとつの顔、アンダーグラウンド・ロック・シーンで活躍してきたハードで不良なおやじを垣間見ることができるので、どうぞ。
# by tomenosuke_2006 | 2006-07-29 18:58 | Kidrobot 新製品情報
写真を追加しました。
スパイモチャ/その2/アタッシュケースものに、写真を4点追加しました。
よかったら見てください。

スパイモチャ/その1/マテルものに、写真を4点追加しました。
よかったらこちらも見てください。
# by tomenosuke_2006 | 2006-07-28 08:46 | ムカシモチャ