タナバタだったんだ。
昼食を抜いた午後1時、腹部のCTを撮るよう伝えに来てくれた看護師さんから、七夕だと教えられた。 7月7日=ぞろ目のラッキーセブン=腎生検ではいい結果が出ますように=星に願いをかける気弱なワタシなのでした。 息を吸ってぇ・・・止めてぇ・・・はい、楽にしてぇ。 きのうはこの言葉を何度も耳にした。 まずはCTスキャン。 次は、自室で抗生物質の点滴を受けたあとに向かった腎生検の処置室で。 レントゲンのベッドに腹ばいになり、さっき抗生物質を注入したサーフローに今度は造影剤の点滴がつながれ、映像を見ながら主治医の小田先生が針を刺す部位に印をつける。 息を吸ってぇ・・・止めてぇ・・・はい、楽にしてぇ。 腰に打たれる局部麻酔の恐怖を紛らわせようと、血液検査や点滴など、ここに来てからいったい何回、針を刺されたことだろう、なんて思ってみる。 パルス療法初日、そういえば看護師さんがサーフロー打つのに失敗し、二度打ちされたりして、けっこう修業は積んできたのだ。 麻酔注射のあと、背後の小田先生から“バッチン”という金属音を聞かされて、処置中にこんな音がしても、けっして動揺しないようにと声をかけられる。 腎臓に突き刺した針の中を通り、糸球体を引っかけて採り出す、何か恐ろしい形状の道具にちがいない。 息を吸ってぇ・・・止めてぇ・・・バッチン・・・はい、楽にしてぇ。 もう一度、息を吸ってぇ・・・止めてぇ・・・バッチン・・・はい、楽にしてぇ。 ホッ。 違和感は感じたものの、腎生検はあっという間に終わった。 ここ岐阜病院の年間の腎生検症例数は100件以上。 さすが小田先生は熟練してらっしゃる。 止血剤の点滴につけ換えられ、移動ベッドで部屋へ帰る。 ちょっと大袈裟。 内科的腎疾患の正しい診断に欠くことの出来ない検査が腎生検。 この結果で今後の治療の方針が決まる。 院内で行われる顕微鏡検査の結果は1週間後。 さらに詳細な病変を調べるための電子顕微鏡による検査が外注に出され、結果はおよそ1カ月後に出るとか。 夕食後、血圧検査が繰り返され、針を刺したあとの傷口から出血がないかどうか何度も確認されて、眠れぬ七夕の夜のはじまり。 寝返りはうてないし、ステロイドの副作用で目がさえて、検査まえに入札したebayのJVC Video Capsuleが落とせたか、とくに気なるのだった。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-08 12:22
| ネフローゼ症候群
気がついてよかった。
10日以上まえ(つまり入院するまえ)から狙っていたebayの出モノ、1973年製JVC Video Capsule(ビデオ・カプセル)の落札時間が、あと15時間に迫っていた。 ・・・腎生検のあとは出血しやすく、一晩安静がきまりだから、夜中ごそごそノートブックを取り出して入札なんてできっこない・・・ ebayは自動延長がないぶんだけ、ヤフオクよりスリリングで面白い。 秒刻みの入札合戦。 残り数秒でひっくり返され、悔しい思いをしたことが何度かある。 残り数秒でひっくり返し、いい気分になったことが何度もある。 が、今回だけは競争を断念し、高めに入れておいて、あしたの朝の楽しみにしておこう。 時代物家電も当店のレパートリーのひとつである。 時代物といっても、とくに60〜70年代の奇抜なデザインのレコードプレーヤーやラジオやTV。 ヴィンテージFMラジオはFMトランスミッターiTripをつけてiPodコンパチで楽しむ。 さしずめ音源は必須のビートルズに、ぜったいモンキーズ。 ナンシー・シナトラやシルヴィ・ヴァルタンもいい。 DVDデッキをつないだヴィンテージTVで0011ナポレオン・ソロでも再生すれば、気分はもはやいたいけな少年時代。 ただしアメリカから仕入れるラジオやTVは、そのまま日本の環境では使えない。 たとえばiPodはiTrip Stationsと呼ばれるアメリカ版プレイリストをアメリカのサイトからダウンロードして周波数帯域を増やす必要がある。 TVはRFモジュレーターという小さなメカをデッキの間にかまして使う。 いま狙っているJVC Video Capsuleは、FMとTVの一粒で二度おいしいコンパチモデル。 何がなんでも落とさねば。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-07 13:20
| ムカシモチャ
この個室、ネットは快適なくせに、ケータイがつながりにくい。
けれど、心配無用。 名古屋の多丸さんにはSkype使ってブログ立ち上げのサポートをしてもらえばいい。 彼の奥さんが、新居を建てるまでの道のりやら寄り道をブログ傾斜地のケーススタディハウスで淡々と綴ってらっしゃるのを拝見して、楽しそうでもあり、彼女のゆったりした暮らしぶりをうらやましく思っていた。 ネフローゼ症候群で手に入れた、店主ゆとりの入院生活。いまこそブログでしょう。 週末かけてブログの体裁を決め、6月3日月曜日には3日間がかりのステロイド静注パルス療法がはじまった。 簡単にいえば、1日250mLのステロイドホルモンを1〜2時間かけて点滴し、血液のろ過装置ともいうべき腎臓の糸球体基底膜(タンパク質を漏らさないための膜)の、あらくなった網の目を矯正させる治療。 浮腫は尿にタンパクが漏れ出ることに起因する。 パルス療法が効くのは、ふたりにひとりの割合だとか。 効いても再発することが多く、場合によっては薬漬けの生活を強いられる。 点滴の2日目、つまり7月4日火曜日、ブログをアップ。 ん、これは面白い。 点滴3日目、もはや病みつきになってしまった。 ステロイドホルモンじゃなくって、ブログのことだよ。 7月6日からはステロイドの錠剤プレドニンを30mm、服用。 いっきにステロイドを止めてショックを起こさないよう、徐々に減らしながら様子をうかがうらしい。 抵抗力を発揮するのに重要なタンパク質を尿に失っているところにもってきて、ステロイドはさらに抵抗力を低下させ、ちょっとした風邪でも肺炎に進行し、最悪、命にかかわることさえあるという。 看護師さんからマスクとうがい薬をもらい、主治医の小田先生からはステロイドの副作用についてレクチャーを受けた。 病気のことばかり書いていると暗いブログになりそうだから、たまにはオモチャネタ(↓)をはさんだりして、とりあえずリアルタイムの7月6日木曜日にたどり着いた。 なんだ、この使命感のようなものは・・・ 明日は午後から腎生検。 局部麻酔で腎臓に針を刺し、糸球体を取り出して、その弱り具合をチェックするのだ。 ちょっと、怖い。 看護師や研修医の新之介先生に頑張ってと励まされると、小心者の店主はますます萎縮するのだった。 あした一晩は安静にしてなくっちゃダメらしく、ブログが書けないのがさびしいような。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-06 22:05
| ネフローゼ症候群
1980年代はじめ、バーバンク・スタジオ(いまはワーナー・スタジオと呼ばれている)へは何度も通ったものだった。
お目当てはリドリー・スコット監督の近未来フィルムノワールブレードランナー。 最初は映画TVに自作のSFプロップやヴィンテージ家具をレンタルしているModern Propsのオーナーに誘われ、スタッフのふりをして紛れ込んだ。 しばらくするとスタジオの広報から外人記者クラブ経由で正式に取材要請があり、スコット監督に会えることになった。 そのときの模様は、当時の読売新聞夕刊の芸能欄や日本版スターログに書いた。 忘れがたいのは、イギリスを離れ、はじめてハリウッドの現場に入り、ユニオン(組合)のやり方に馴染めずイライラしている監督の姿だった。 監督はムービーカメラの位置替えどころか、ファインダーすらのぞけない。 カメラを動かすのはカメラオペレーターで、写角を決めるのはシネマトグラファー。 メジャー作品で働くクルーは、それぞれ属するユニオンによって自分の職分が守られ、余計なことはしない、やらせないが徹底していた。 ヴィジュアリストのスコット監督としては、イギリスで撮ったエイリアンのようにはいかず、ことのほかご機嫌ななめだった。 「ハリウッドはアーノルド・パーマーからクラブを取り上げ、ゴルフをしろと言ってるようなものだ!」 後方のオープンセットでは、ワイヤーに結ばれたスピナーが宙に浮いているのが見えた。 ミニチュア撮影をしているサンタモニカ・ビーチ近くのSFXスタジオ、 EEGへも足繁く通った。 ダグラス・トランブル、リチャード・ユーリシッチにはよくしてもらった。 モデルメーカーのマーク・ステットソンとは、お互い若いということもあって仲よくなり、LAを離れる1985年まで、映画でいえば2010年やバカルー・バンザイの8次元ギャラクシーのころまで、何度も彼のワークショップへ遊びによったものだった。 そのマークのオフィスのロッカーの上には、バーバンク・スタジオで目にしたスピナーの正確なスケールモデルがアクリルケースにおさまり、飾られていた。 いまでは強力な支持者を擁するカルト映画ブレードランナーこと、ブレラン。 4半世紀、ブレランのことばかり考えてきた筋金入りの友人、新関さんには笑われるかもしれないけれど、モノ好きの店主としては、スピナーと、それからデッカードが手にしていたあのごつい銃、ブラスターを思うたび、そのオモチャに触れるだけで、こころは1980年代にワープするのだ。 そこで店長候補君と計画しているのが『ブレラン祭り』。 お店の旗揚げ第一段は、ヤフオクを利用したスピナーとブラスターの一挙競売というのはどうだろう。 じつは我らが店長、モデルメーカーとしても凄腕で、壊れたプロップを復元したり、ガレキを見事に完成させて、しじゅう店主を喜ばせてくれているのだよ。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-06 18:36
| プロップ
下呂市と岐阜市、往復4時間近くのドライブはネフローゼ患者にはキツイ。
もう1カ月ほどまえから、とくに足の浮腫(むくみ)がひどくて、すんなり履ける靴がなくなっていた。 kidrobotキッドロボットで手に入れたダニー印の500足限定スニーカー(サイズ9)も、一度ムリヤリ足を突っ込んだだけで、箱に戻した。 猿の惑星の裸足のコーネリアスに履かせてあげたくなるような無印良品製の茶と黒のツートンカラーのサンダル(LLサイズ)が、いまでは唯一の普段履き。 それにしたってクマのぬいぐるみのように腫れ上った足はサンダルからはみ出て、甲にはバンドの跡がくっきり段差になって残る。 痺れたような、痛いような感覚は、たまんねぇー。 一刻も早く下呂に帰り着き、ひとまず足を伸ばして休みたいの一心で飛騨街道を飛ばしていると、前方の交差点で渋滞のクルマをポリスが約3名、さばいている。 イヤーな予感。 すぐ先のトンネル内で玉突き事故が発生したため全面通行止めとなり、交差点を反対方向に迂回して山道を抜け、下呂に向かうしかなくなった。 あと1時間が、あと2時間に延長。 ネフローゼは足が浮腫むだけじゃない。 パワーが持続しないのだ。 徐々に体力が衰え、いまでは健康なころの4分の1ぐらいしか力が出ない。 あらゆる意欲を吸いとってしまう底なしの疲労感に全身が侵略されているような。 ジャック・フィニィのボディスナッチャーの餌食になったような。 が、もうこれ以上、泣き言はいうまい。 いまは昼の12時。 とにかく5時前には岐阜病院へ舞い戻り、いくつか検査を受けたあと、入院の手続きを済まさなくては。 会社に顔を出したり、家を片づけたり、入院のための荷造りに費やすことができるのは1時間だけ。 店長候補君が3倍速ビデオのフットワークで助けてくれた。 バタバタのあと、彼のクルマの助手席に倒れ込み、気がつけば、もう病院の駐車場。 尿、血液、心電図、エコー、レントゲンのフルコース検査も無事済ますことができ、個室に入ると、すかさずノートブックに灯を入れた。 と、なんとAirMacがつながってしまったのだ。 しかも早い、早い、光の早さ。 入院患者用にワイヤレスネットワークが完備しているなんて、まさか。 この際だ、セキュリティうんぬんとか、余計なことは考えないでおこう。 これは天の恵みにちがいないのだ。 そうに決まっている。 ・・・幸先のいい入院生活のはじまりを、予感しないではいられなかった。
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by tomenosuke_2006
| 2006-07-05 19:12
| ネフローゼ症候群
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