1.ターミネーター(1984)のエンドスケルトン。
2.エイリアン2(1986)のクィーンのコンセプトマケット。 3.同じくエイリアン2のウォーリアーの全身レリーフ。 4.プレデター2(1990)のフルボディ。 5.忘れていたけれど、パンプキンヘッド(1988)のフルボディもあった。 エンスケのレア度については、すでに語ったが、スタン・ウィンストンから借り出した他の創り物も半端ではなかった。 まずクィーンは、映画のために作られたさまざまなバージョンのクィーンたち、すなわち特大フルスケール版やミニチュア撮影用のロッドパペット版の原点のようなもの。 粘土彫刻をモールド(型)にとり、必要最小限のプルを作ると、デテールアップと着色を施して、大型版やパペット版へと展開するための基本彫刻(コンセプトマケット)として使う。 予定では、大切に保管されていたそのモールドから特別にイベント(ハリウッド映画村/1991)用のプルを作ってもらうはずだったが、海を渡って来たのはエイリアン2製作時(1985)に作られ、以来スタンの工房の応接室に飾られていた正真正銘のコンセプトマケットにほかならい。 黒とダークブルーを何層にも塗り重ね、色合いは深くよどみ、恐ろしくも底なしの艶を放つ逸品である。 ウォーリアも、同じ時期にボディスーツ(着ぐるみ)用のオリジナルパーツを使ってレリーフ化された特製。 映画製作中の工房の壁高くにはり付けられ、スタッフたちを見下ろしていた歴史の品でもある。 こちらも予定では同じものを再製作してもらうはずだったが、5年分のホコリをかぶったまま工房から東京へ産直された。 プレデターは実際に映画撮影用に作られ、大きなダメージを受けることなく生き延びたスタントスーツのパーツをいくつか組み合わせ、自立するように改造されたもの。 ポーズをとらせ、中に鉄の骨組みを入れて、隙間にポリフォーム(スポンジの一種)が流し込まれていた。 輸送のことなど何も考えないで作られたため、左手の剣は内側の骨組みに直付け溶接されて取外しがきかない。 そのため身長2メートル40センチの高さと相まって、取り回しはきわめて悪い。 取り回しの悪さからいったら、右に出るものがいないのが全長3メートルのパンプキンヘッドである。 これはスタンの記念すべき初映画監督作に登場したタイトルロールのメインキャラ。 あまり興味がなかったのだが、持ってけ、持ってけと彼がいうから展示することにした。 作品提供の条件として、ファーストクラス利用の夫人同伴日本旅行というお楽しみがあったのだ。 イベントの主催者からは別途で費用を預かっていたから、徹底的に接待した。 グルメと温泉の旅の1週間だった。 新宿のセンチュリーハイアット東京を基地に、途中、下呂温泉から飛騨高山へと足を運んだ。 下呂温泉一の高級旅館水明館の夜がスタンを昇天させたと、店主は思っている。 下呂を一望する最上階の特別室で、きれいどころの芸者をあげて、最高の料理と最高の地酒による純和風のおもてなし。 スタンからは、工房を殺風景なままにしておくわけにはいかないから、あのあと、東京へ送ったと同じ物(エンスケだけはT2のもの)を急いで作ったと聞かされていた。 で、よ〜く考えてみた。 イベントが終り、作品を返却したら、ダブついてしまうじゃないか。 何かひとつぐらい記念にもらえないだろうか。 芸者から野球拳の手ほどきを受ける上機嫌のスタンに、何気に切り出してみた。 すると彼は、こう答えたのだ。 「ひとつといわず、ぜんぶ君に預けるよ」 夫人のサンディが笑顔で証人になると約束してくれた。 アルコールに弱い店主だが、その夜ばかりは飲み助のスタンに負けないくらい飲んで、飲んで、飲み明かしたのだった。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-16 21:24
| プロップ
パルス療法やステロイドの錠剤プレドニンが効くと腎機能が活発になり、尿に“漏れ”出ていたタンパクが減りはじめる。
減ると血清のアルブミン濃度が上がり、上がると血液のバランスが保たれ、血そのものに張りが出て、血中の水分が毛細血管から“漏れ”出なくなる。 なると同時に体内に“漏れ”出ていた水が吸収され、一度、血にかえり尿となり、浮腫みは消えていく。 これを「漏れの三変化」という、かどうかは知らないけれど、治療がうまくいけばウザイ浮腫みは、やがてオシッコとなり、小便器を経由して忘却の彼方へと消えて行くのだ。 ゆえに快方に向かっているかどうかを確かめる目安として、浮腫みの状態、もしくはオシッコの量がとりざたされる。 主治医の小田先生や担当医の新之介先生からは、ふたこと目には、オシッコの量について質問される。 看護師さんとの朝のあいさつも、もっぱら、オシッコ出てますかぁ、である。 ここにいると、オシッコは人生である。 排尿時は男子トイレの小便器に向かって立つが、大事なオシッコは便器にはぶちゃけない。 計量カップのようなプラスチックの容器に丁重に注いだのち、2リットルの畜尿ビンに移しかえる。 そのビンはトイレにしつらえられた棚に置かれ、朝、前日分が捨てられてカラになり、また畜尿の1日がはじまる仕組み。 患者として決められた日課といえば、これくらい。 なんと単純で、簡単過ぎる日々の連続だぁ。 トイレの棚には、もちろん他の患者の畜尿ビンもならんでいて、変化に乏しいこんな毎日だから、他人のオシッコを見て一喜一憂する人になってしまった。 同じネフローゼ症候群の患者なのか、あるいは別の病気で畜尿しているのか知らないけれど、なみなみと溢れんばかりに注がれた重そうな2リットルビンを目の当たりにしたりすると、心の奥底から羨ましく思うのだ。 大きなシッコに嫉妬する最近の私なのでした。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-15 23:44
| ネフローゼ症候群
TVなら0011ナポレオン・ソロ、映画なら007、細身のスーツがかっこいいスーパー・スパイの活躍に胸躍らせた。 少年は、なぜスパイものが流行っているのか考えもしなかったけれど、じつは当時のアメリカとソビエト(米ソ)は互いを仮想敵国と想定し、勢力拡大と軍備拡張を競い合っていた。 核兵器開発と宇宙開発は大国間の競争を象徴する最たるものだった。 当然のことながら本物のスパイが暗躍し、時代の空気に敏感なショービジネス界がそれを娯楽のネタにした。 少年はそんな世界の緊張など知らないから、スパイに憧れ、彼らが使うピストルとか秘密兵器のオモチャが欲しくてたまらなかった。 60年代中ごろ、007の新作第5弾007は2度死ぬが日本ロケされることになり、スパイ・ブームは絶好調に達した。 少年も有頂天だった。 白いビキニの浜美枝が少年に思春期の到来を告げた。 けれど一方で不穏な社会の変化が気になりはじめてもいた。 たとえば月に1度は行く床屋の待合室で目にするグラフ雑誌。 たびたびベトナム戦争を特集し、正視にたえない報道写真が表紙を飾るようになっていた。 新聞やTVも連日、戦争を伝えた。 無残な死をとらえたドキュメンタリーは、けれど少年には強烈過ぎて、無関心を装うこと、スパイTVや映画にますます傾注することで、夢の中へ逃げていったのだった。 そんな複雑な時代は、スパイモチャの時代だったのである。 まず、アメリカの最大手玩具メーカーマテルが、映画やTVやコミックネタではなく、オリジナルのスパイモチャ・シリーズ、エージェントゼロ=Agent ZEROで先陣を切った。 材質はおもにプラスチック。 ムービーカメラがマシンガンに変身するムービーショットガン(左上の写真)や、小型カメラがピストルに変身するスナップショットガン(右上の写真)。 トランジスタラジオやポケットナイフがボタン1発でライフルやピストルに変わった。 いずれも火薬で発火音を楽しむ、いわゆるキャップガン。 このうち、ポケットナイフ(商品名はポケットショットナイフ)だけ、ゴム製の刃以外は金属製で、他とは異なる重さと感触だった。 エージェントゼロ発売まえからマテルはキャップガンで有名だった。 ファンナー50=Fanner50という名のコルトピースメーカー・タイプ(西部劇風)のキャップガンをヒットさせていたのだ。 そのファンナー50の銃身を切り詰め、握りのエッジを丸くまとめて出したのが、現代リボルバーのスナブノーズ=Snub Noseだった。 これは一時期、エージェントゼロのシリーズに加えられたり、70年代はじめには新聞連載のコミック“ディック・トレーシー”とタイアップ、専用ホルスター付きで再販された。 ファンナー50やスナッブノーズはマテルの専売特許シューティングシェルを使うキャップガンだ。 スプリングが仕掛けられた薬莢にプラスチックの弾丸を差し込み、さらに薬莢の裏に丸い紙火薬を貼って撃つと、発火音とともに弾丸が放物線を描いて飛んでいく。 1960年代はじめ、東京の小さな会社が、このマテルのスナッブノーズを黒く染めたカスタムガンを販売していたが、じつはその会社こそ、日本で最初のモデルガン・メーカーとして旗揚げし、のちに“007は2度死ぬ”の日本ロケにハイエンドなステージガンを提供することになるMGCだったのである。 つづく。 スナッブノーズ。左がシューティングシェルのセット大小で、完品は銃本体よりも入手困難だ。 エージェントゼロだよ。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-15 21:13
| ムカシモチャ
ハイテク(先端技術)の対極にロウテクがあるように、ハイブロウ(知的で高級)に対峙させてロウブロウと呼び、気軽に芸術を楽しんでもらうつもりでいる。 デザイナーズトイとの違いは、前者が立体であるのに対し、こっちは平面。 人形とポスターの違いのようなもで、同じアーティストがふたつのフィールドを往き来する。 ベアブリックのデザインなどで日本にもファンの多いフランク・コジックをはじめ、ティム・ビスカップとその奥さんのセオナ・ホン、店主一押しのゲイリー・ベースマンたちによる限定版が、ごっちゃり用意されている。 で、きょうはそのゲーリー・ベースマンの紹介を。 ロサンゼルスに住む彼は、New Yorker、Time、Rolling Stone、GQといったアメリカの代表的なメジャー雑誌で活躍するイラストレーターとして、まず有名になった。 CMでコラボした企業にはNIKE、Mercedes-Benz、Capitol Recordなどのビッグネームが名を連ねてもいる。 もちろんオモチャの世界でも活躍し、世に出す限定版トイは片っ端から売れて、発売の翌日にはebayなどのオークションサイトでプレミア価格で落札されたりする。 超売れっ子にもかかわらずサービス精神旺盛で、メディアの取材やサイン会を積極的にこなし、ファンを大切にする気さくな人物でもある。 彼のサイトのネットショップ(残念ながら現在休止中)で何度か買い物するうちに、店長はゲーリーをますます好きになってしまった。 Gary Baseman Studiosとう名で送られてくるメールは、日を追うごとにフレンドリーになり、アートワークやフィギュアの写真が添付されるようになって、あるとき質問してみると、ゲーリーその人がメールを打っていたのだ。 つまり通販の事務ごとまで、彼自らこなしていたわけ。 どうりで送料を聞いても、レスポンスがいまいちだったわけだ。 確かにフィギュアとポスターと本をまとめた国際郵便の送料なんて、即答できるものではない。 もしや彼はその荷物を持って郵便局へ行き、料金を確かめていたりして。 イラストレーターやトイデザイナーとして成功しただけでなく、3年連続でエミー賞に輝いたTVアニメTeacher's Petのエグゼクティブ・プロデューサーが、である。 Tobyトビー(左上の写真の無数のヌイグルミまたは右上の絵の少女の膝上のキャラ)やDumbLuckダムラックなど、 奇妙なキャラクターの生みの親。 DunnyダニーやQeeキューイでもゲーリー節を発揮している。 あの体中にプリントされたダークでドープなシミには、幾重にも折り重なった物語のレイヤーが潜んでいるような、見つめるほどに引き込まれるカワイク残酷な魅力。 当店では、すでに絶版となって久しいゲーリーのフィギュアを含む圧倒的なコレクションを披露する。 乞うご期待! #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-14 21:03
| ロウブロウアート
午後、ノートブックでゴールドフィンガーのDVDを観ていたら、詳しくはショーン・コネリー・ボンドがワラの山に投げ飛ばしたプッシー・ガロアを羽交い締めにして、むりやり彼女の唇を奪おうとしているとき、主治医の小田先生が研修医の若い子たちを何人も従え、回診にいらした。
けさの尿と血液検査の結果、先週はじめのパルス療法後に低下したタンパク尿が、またちょっと増え、それに反比例して血清のアルブミンというタンパク質が下がる典型的なネフローゼ状態だと知らされた。 落胆する私を励ますように担当の研修医、新之介先生が、それでも入院時と比べれば改善してるからと言葉を添える。 結果は、連休あとの来週火曜日から3日間、もう一度、パルス療法をうけることに。 摂取している水分以上にオシッコが出て、ゆっくりだけれど浮腫みは引きつつあるし、体重も入院時からくらべて2キロは減った。 2度目のパルス療法で、何がなんでもスッキリしたい。 プッシーといっしょに着地したパラシュートの中で、ボンドが味わった以上のスッキリ感。 今度こそ映画のエンディングのようなカタルシスを期待したいと思うのだった。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-13 23:55
| ネフローゼ症候群
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