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午後、ノートブックでゴールドフィンガーのDVDを観ていたら、詳しくはショーン・コネリー・ボンドがワラの山に投げ飛ばしたプッシー・ガロアを羽交い締めにして、むりやり彼女の唇を奪おうとしているとき、主治医の小田先生が研修医の若い子たちを何人も従え、回診にいらした。
けさの尿と血液検査の結果、先週はじめのパルス療法後に低下したタンパク尿が、またちょっと増え、それに反比例して血清のアルブミンというタンパク質が下がる典型的なネフローゼ状態だと知らされた。 落胆する私を励ますように担当の研修医、新之介先生が、それでも入院時と比べれば改善してるからと言葉を添える。 結果は、連休あとの来週火曜日から3日間、もう一度、パルス療法をうけることに。 摂取している水分以上にオシッコが出て、ゆっくりだけれど浮腫みは引きつつあるし、体重も入院時からくらべて2キロは減った。 2度目のパルス療法で、何がなんでもスッキリしたい。 プッシーといっしょに着地したパラシュートの中で、ボンドが味わった以上のスッキリ感。 今度こそ映画のエンディングのようなカタルシスを期待したいと思うのだった。 ![]() #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-13 23:55
| ネフローゼ症候群
まえから欲しいと思っていた絶版品を見つけ、喜々として値段をたずねると、「プライスついてませんかぁ? なら、それ、非売品なんですぅ」なんてバイトの女店員にいわれたりして、ムッときたこと、ないですか。
店主は、何度もある。 売り物じゃねぇなら、店にならべんじゃねーよ。 博物館でもあるまいし、オモチャ屋やホビーショップを名乗る以上、商人(あきんど)に徹したらどうなんだ。 少なくとも留之助商店はプロの商人を目指す。 だから非売品はない。 ショーケースだろうが、使用中の電話だろうが、店から移動できるモノすべてにプライスが付く(店長候補君だけは当分非売品)。 最初のターミネーター(1984)で作られた現存する唯一のフルボディ・エンドスケルトンも、店に飾る以上は、売り物である。 これをプレゼントしてくれたSFXアーティストで、何度もアカデミー賞をとったスタン・ウィンストンには申しわけないけれど、墓場へ持っていくわけにもいかないし。 だいいちスタンが約束を守らなかったから、店主がオリジナルを所有するハメになったのだ。 もうあれから15年。 1991年に東京と大阪で開催された映画のイベント“ハリウッド映画村”の監修役として、若き日の店主はロサンゼルスと東京を行ったり来たりしていた。 ハリウッド映画の過去・現在・未来を、実際に映画で使われたセット・小道具・衣装・記録写真や映像などで展覧する期間限定のイベント。 オープニングを2カ月後のGWにひかえ、最初の開催地、東京では会場作りが予定どおりに進み、展示物の大半は太平洋を渡る船にあった。 すべては順調だった。 旧知の仲のスタン・ウィンストンには、早い時期から協力をとりつけていた。 展示用にエイリアン2の「クィーンのコンセプトマケット」と「ウォーリアーの全身レリーフ」、プレデター2の「フルボディ」とT2の「エンドスケルトン」を、オリジナル・モールド(鋳型)から作ってもらうため、彼の提示した製作原価(材料費と人件費)を支払い、契約書も交わしていた。 そのスタンがチョンボをしていようとは・・・。 オリジナル・モールドから抜く創作物は通称プルといい、映画で実際に使う以外は、めったやたらに作られない。 プルとはオリジナルと同じ意味だが、実際に映画の撮影で使われたものを、とくにオリジナル・プロップと呼んで区別する場合も。 最近、サイドショーが商品化しているハイエンドなフルスケールモノなどは、プルをさらに型取りした量産用のモールドから作られるいわゆるレプリカ。 しかしレプリカでは偽物や模造品のように聞こえることから、プロップ・レプリカと呼ぶ人もいる。 イベントで展示したあとは、すべての作品を返却する約束のため、スタンの提示した製作原価は格安だった。 が、運送会社の担当者が引き取り予定日の1週間前に、作品の下見のため彼の工房を訪ねると、ひとつも完成していないことがわかり、慌てて店主のもとに電話をしてきた。 帰国の準備をしていた店主は、もっと慌てた。 スピルバーグから恐竜映画のオファーがきて、突然忙しくなったとスタン。 ジュラシック・パークといって、いままでにないスケールとリアリズムの歴史的な恐竜映画になるから期待してくれとも。 知ったことか! バッカモン!! そう、心で叫び、彼の工房へ急行した。 東京会場の展示コーナーに穴を開けるわけにはいかないし、店主の信用にも関わる。 もはや解決策はひとつしかない。 彼が広い工房のあちこちに展示しているオリジナル・プロップを何としてでも借り出すのだ。 そう、彼の工房は、打ち合わせや仕事のオファで訪れる映画人たちをアッといわせようと、自作の怪物クリーチャーのオリジナルが、ドラマチックに展示してあることで有名な場所だった。 モールドが破棄されたために、二度と再び作ることのできない宝であり記念品だと自慢していたターミネーター1作目の、現存する唯一のエンドスケルトンも、この際、T2の代わりに船に乗ってもらおう。 懇願したり、泣きついたりで、最後は店主が勝った。 当たり前である。 契約書だってあったのだ。 そうやって日本に来たスタン・ウィンストンの代表作たちだったが、なぜ生まれ故郷に帰ることなく店主のものになってしまったのか、それにはもひとつ長い話を披露しなくてはならない。 ま、そのうちに。 ![]() #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-13 22:39
| プロップ
エレベーターを出てすぐ正面中央にある“東5F・ナースステーション”をはさんで、右に6人部屋が、左に個室がつづく。
ナースステーションのうしろにはリネン室、男子トイレ、汚物処理室、女子トイレ、浴室、洗面洗濯室が整然とレイアウトされ、リネン室以外は6人部屋側からも個室側からもアクセスできるようになっている。 建物は古いが、機能的。 男子トイレに洋式(車椅子用)がひとつしかないのをのぞけば、入院生活に不便は感じない。 私の部屋は通路のいちばん奥にあるバストイレ付き特別室の手前、洗面洗濯室の斜め向かいにある。 したがってエレベーターを降りて自室へ行くには、ほとんどの個室のまえを通り抜けねばならず、中にはドアが開け放たれた部屋もあり、いやがおうにも室内の様子が目に飛び込んでくる。 東5Fには腎臓内科以外に、耳鼻科、神経内科、放射線科のさまざまな病状の患者が入院生活を送り、全部で61床のベッドに空きはない。 ある個室は、つめかけた家族が老人の横たわるベッドを取り囲み、騒然とした雰囲気に包まれていたが、いまは落ち着きを取り戻した。 ブルーのチューブをつけた別の老人は、身じろぎひとつせず、いつも顔を窓に向けて横たわっている。 果たしてその人は空を見ているのか、それとも目を閉じているのか、私には分からない。 ベッドのかたわらに吊るされた大きな点滴の袋越しに見える夏の空は、黄色い薬液の色と重なって、異様に重苦しい。 ベッドを取り払い、マットレスを2枚、ならべて敷いた部屋もある。 そこには老夫婦がいるのだが、どちらが病人で、どちらが付添なのか、いまだに分からない。 朝、きまって「痛い、痛い」と悲痛な声を上げる人。 からんだ痰(たん)を吐き出そうと、しじゅう洗面所で咳き込む人。 消灯後の暗くなった通路でしか見かけない車椅子の男性。 その人は他界した父と同じ糖尿病の合併症で壊疽(えそ)を患ったのだろう。 左足が膝下からない。 病院で過ごしていると、いままでとは異なる速度でゆっくりと心が働くようになる。 なぜそんなに先を急がねばならなかったのか。 慌てすぎて見落とした事柄、失ったものがあったことに気付かされる。 痩せ衰えた老婦人を車椅子に乗せ、時間はありあまるほどあるからと、毎日、院内を散歩する紳士。 細い腕で夫を支え、便座に腰掛けさせたあと、すみませんといって男子トイレを離れていったその妻は、あきらかに私と同世代だ。 孤独を垣間見、一方で絆の尊さを知る。 ネフローゼ症候群を治すために来た私だったが、退院するころは、少しは心も改善されているかもしれない。 パルス療法の効果はいまだ劇的にはあらわれず、2度目の療法を施すかどうか、明日の尿と血液検査のあと、決められる。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-12 23:22
| ネフローゼ症候群
もったいぶってヒミツにしていた「取扱商品を総称する造語」ですが、「オブジェモチャ」といいます。 なんか、そんな感じ、しませんか。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-12 13:44
| 留之助商店計画
店長が小学5年生(およそ43年前)のころのマイブームといえば、第1次アニメブームを背景に続々と発売されたロボット・プラモを集めることだった。
中でもビッグサンダーボーイの迫力は忘れられず、結局は小学生の自分には完成できなかった悔しさから、いまもそのルーツとなったアメリカ版“ロボット・コマンド”を探し出し、完品にレストアするのを楽しんでいる。 ま、ロボット・コマンドの物語は別の機会にゆずるとして、去年あたりから、ロボット小学生を卒業し、モデルガン中学生なったあのころを追体験しているというお話。 きっけは実家の納戸で見つけた紙袋。 中から当時のモデルガン・カタログがざくざく出てきて、夢よふたたび状態に陥ってしまったのだ。 思えば1960年代半ばのモデルガン自主規制時代。 バレルにインサートは入っていたけれど、亜鉛ダイキャストのボディは黒光りして、握れば冷たく、本物はきっとこうだろうと思わせるリアリズムの虜になっていた。 中学生には過ぎた趣味? せっせと貯めた小遣やお年玉をにぎりしめ、高山線に3時間ゆられて、名古屋のオガワ屋というお店に何度も通った。 オガワ屋では、おもにMGCモノを買った。 帰りは中日シネラマでパリは燃えているかを観たりした。 代金を入れ、二重三重に封をした現金書留と引替えに届けられる通販が、また楽しかった。 MGCが新製品の予告をすると、その発売前にすかさず商品化した上野の中田商店には、お世話になった。 コルトガバメントは味も素っ気もないタダの鉄の塊のような失敗作だったけれど、ルガーP08はトリガーの位置こそ実物とは異なるものの、トグルがガシャンガシャン上下する激しい指アクションで、そりゃぁシビレた。 思えば、実家の2階の子供部屋は、下呂の少年文化の発進基地だった。 しじゅう、部屋は遊びに来た男の子でいっぱいだった。 出張の多いオモチャ好きの父のおかげもあって、弟はGIジョーとミニカー、兄の店主はマテルのエージェントゼロ=Agent Zeroやスナッブノーズ=Snub Noseのあと、モデルガンに到達していた(ヴィンテージ・アメトイはToyNfo.comで検索できます)。 店主のことはおのずとみんなの知るところとなり、真面目なガリ勉野郎や生徒会の役員たちから、モデルガンを集めているというだけで非難を浴びた。 折しも本物そっくりのモデルガンが犯罪に悪用されたりして、物議をかもしはじめたころ。 そして高校3年生のとき(1971年)、とうとうおとずれたモデルガンの暗黒時代、いわゆる昭和46年規制発令! ![]() 銃刀法が改正されて、それまでの黒鉄モデルガンの所持が禁止されることになり、なんとオマワリ(敬称略)が黄色のペンキ持参で当家を訪ねて来たのだった。 以来、新しい金メッキのモデルガンを買う気は失せ、黄色の思い出は散逸して、いまに至っていたのだが、納戸にカタログを見つけたばっかりに。 Yahoo!オークションのここらあたりからボチボチ入っていき、遊んでいるうちに、いまではよき理解者にも恵まれ、楽しく意見交換したりしている。 売買は法的に厳禁だから、留之助商店の取扱商品とはいかないけれど、だからこそ店主唯一の、商売抜きでくつろげる密かな愉しみとなっている。 そんなとこです、四国の自称「お百姓さん」。 これからもどうぞよろしくお願いいたします。 #
by tomenosuke_2006
| 2006-07-11 21:30
| ムカシモチャ
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